那須川天心に宿る被弾覚悟の精神 明らかなスタイル変化で「KO詐欺はやめる」と言い切った理由
連打でも疲れない「それが試合でできるか。度胸との闘いになる」
この日は追い込みの時期で疲れがピークに達していたが、軽快な動きを見せた。「ラウンド中に変な疲れがない。前は打っても3発で疲れたけど、今は疲れないのでバンバン行ける。無駄な動きが減ったのが一番」とギアを上げる加減を学習。「だから、3ラウンドの出力を忘れちゃいました。キックボクシングはもうできない」と笑う。
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中でも“被弾覚悟”の精神が後押しする。「もちろん、もらわないことも意識しています」と前置きし、続けた。
「その中で相打ちでも行くし、カウンターだけじゃなく攻めていく。リスクを取って飛び込んでいくのが進化。今までは相手が来てそれを対処するだけ。今回は自分で圧力をかける。そのやり方がわかってきました。今まで遠い距離でやっていたので、戦う景色が変わってきた。それが試合でできるか。度胸との闘いだと思う」
この日は自身より身長が高いスーパーバンタム級の右構え2人に対し、プレッシャーをかけて下がらせる場面が目立った。それぞれ2ラウンドずつのスパーで好戦的な姿を披露。パートナーたちに「パンチ力はスーパーバンタム級でも強い方。試合の8オンスのグラブならKOできる」「スパーのたびに成長して驚かされる」と言わしめた。
年末は30日まで練習。年明けは3日に始動した。大晦日に試合があったキック時代は正月を満喫したが、「試合が決まってずっと試合モード。おせちも、お餅もない。ずっと気を張っている状態」と正月返上だった。来月でプロテスト合格から1年。新人期間を振り返り、ボクシングファンの声も受け止めた。
「思うようにいかないことの方が多いけど、それすら楽しめている。ちゃんと世間と闘っていると思う。応援してくれる人もいるし、応援してくれない人もたくさんいる。いいこと、悪いことがあるけど、僕からボクシング界を巻き込んで最終的に報われるようにしたい。面白いものを見せられると思う」
着実に成長してきた神童。「『詐欺はアカン』です。期待してもらっていいですよ」。金髪の頭から流れる大粒の汗。ニヤリとする横顔には自信が漲っていた。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)