「W杯で日本文化に感銘を…」「銭湯は毎日行ってるよ」 極東の日本に世界のラグビー大物が集まるワケ
サベアの言葉から考えられる6つの理由
サベアの言葉からは、レジェンド達が日本に大挙してやって来る理由として以下の5つ(<1>~<5>)が考えられる。それに加えて<6>も決め手になったのだろう。
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<1>日本のラグビーレベルの進化
<2>W杯(日本大会)などでの来日経験
<3>日本でプレーする仲間、指導者などの影響
<4>世界クラスの選手の多さ
<5>母国にはない文化やラグビー環境での挑戦
<6>サラリーなどの条件面の魅力
6つの理由の中で、<6>の契約条件についてはプロ選手である限りは大前提のようなものだが、日本でのサラリーが世界クラスの選手にも満足な額になってきているのは間違いない。この領域については後で触れるが、10年前なら世界のトップ選手で、日本でプレーすることに魅力を感じている選手は少なかった。それ以前からジョン・カーワンやジェイミー・ジョセフら、後に日本代表ヘッドコーチ(HC)にも就任したスター選手も来日してはいたが、当時は母国や他の強豪リーグで第一線を退いた選手や、日本代表で活躍したルーク・トンプソンのような、来日前は母国で実績を残していない若手らがチャンスを求めて集まっていた。
そのような状況に大きな変化を起こす転換点となったのは、2015年W杯イングランド大会だった。過去の大会で1勝しかしていない日本が、南アフリカ代表から歴史的な金星を挙げ、プール戦敗退ながら3勝を挙げたことが、海外トップ選手が来日するための“負の敷居”を下げた。さらに決定的だったのは、サベアも指摘した19年大会で日本各地に滞在し、プレーした実体験が、各国の代表選手に日本に対するポジティブなイメージを与えたことだろう。日本のラグビーレベルを肌感として理解するのと同時に、ユニークな食事や文化、そしていわゆる「おもてなし」に象徴される暮らしやすさを直接感じたことも大きかった。
いまや世界のどこにいてもネットなどで各国のゲームが観られる時代だ。ニュージーランドなどではリーグワンも一部中継されている。日本のラグビーの実力を誰もが目の当たりに出来ることに加えて、選手たちの決断を後押ししたのは信頼できる仲間たちからの情報、つまり<3>だった。サベアもラウマペのアドバイスに言及しているが、同じオールブラックスでBL東京入りしたモウンガも同様に仲間からの情報について語っている。
「僕と同じクルセイダーズ、東芝(BL東京)でプレーしたティム・ベイトマンやマット・トッド、トム・テイラーたちが、クライストチャーチと府中の似た部分も教えてくれました。家族で過ごすにはとっておきの町だということも聞いています。子供がいるのでそこは非常に重要な要素でした」
ラグビーについてはもちろんだが、それ以外の暮らしの面などでも、信頼の置ける仲間からの情報が来日する大きな判断材料になっている。日本でのプレーと生活を経験した選手が年々増えていることが、新たに来日を考える選手を生み出しているのだ。そして、日本での生活が始まったばかりのモウンガは、新天地での暮らしやすさを早くも実感しているという。
「本当に平穏さを感じる国だし、人口は多いが皆が自分のペースで活動している印象です。文化や食べ物もすごく気に入っていますし、銭湯には毎日行っています。そんなところが非常に気に入っています。1000年以上続いている文化に触れ、理解し、その一部になれるのは楽しいことです。そして、日本を一番素晴らしい国にしている理由は、やはりこの国の人たちかなと思います。日本に着いてから何度も、どこかへ行くにはどうすればいかを聞いていますが、みんな親切に教えてくれるようなところもすごくいいです」