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「2度と一緒にやりたくない」陰口もある妥協なき指導 “劇薬”エディー・ジョーンズと日本ラグビーの課題

エディーが会見で語った3つのポイントとは

 第1のポイントは、先にも紹介した日本代表としてのアイデンティティであり、「超速」というワードを挙げている。2つ目は、代表予備軍の若い世代をどう育成するかだ。

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「日本には大学ラグビーがあるので、この若い選手の育成に力を入れてポテンシャルを最大化してあげる努力が必要です。難しいことだが、うまくシステムを作り上げて高校から大学、大学からプロへと育てていくシステムを作り上げていきたい。例えばアイルランドがいい例で、ラグビーの競技人口が少ない中から可能性のある選手をしっかりと育成している。そういうことも参考にしていきたい」

 選手という資源が少ない日本だからこそ、学生世代も有効に生かしたい。こんな発想はトップレベルの競技人口が高くない日本ではとりわけ重要だ。高校世代までは世界でも戦える日本がU20の世界大会では苦戦続きで、その世代を卒業した選手たちは所属チーム任せという環境をよく理解したビジョンでもある。

 そして3つ目のポイントに挙げるのが、その若手も含め、代表、リーグワンなど日本のラグビーを、より連繋性の高い、一貫性を持った形にしていくことだ。

「日本では大学は大学、社会人は社会人と分かれているように思う。それを一貫性を持った考え方の下で1つのビジョン、1つの目標を目指して同じようにしていくことが大事だと思います。日本にはハーモニー、つまり調和を重視する伝統がある。そういう特徴も生かして、オールワンというか一つのシステムの中で選手育成に取り組んでいきたい」

 このような指摘は、一見簡単そうにみえる一方で構造改革にも匹敵する挑戦でもある。エディーの思惑を具体的に考えると、大学で主力として活躍する選手を日本代表やその予備軍、場合によってはリーグワンなどのクラブでプレーさせることも含まれていると解釈出来る。そうなると、大学やラグビー部側では、何のために有望選手を入学させたのかという問題も生じる。もちろん単位取得などの問題もある。そして、若い人材を効果的に育てるためには、大学の伝統の試合の固定された日程の洗い直しという問題も浮上しかねない。従来の大学ラグビーの伝統や価値観を壊してまで、選手個々の能力アップを推進できるのか。そんな舵取りも大きなチャレンジになるだろう。

 日本協会では、新指導者選定が始まった時から、日本での選手、指導者等の活動実績を選定条件の1つに挙げていた。個人的には、世界のトップ4、そして将来的に開催を目指す2度目のW杯では優勝を掲げる協会が、指導者に「日本で」という条件を課すのは、優秀な指導者のプライオリティーを後退させかねないという疑念がある。W杯で1勝を目指す程度ならいいが、事は世界で4番目に強くなりたいというのだ。日本での経験や理解度よりも、チームを強く出来る能力が第一議だ。しかも、今秋のW杯フランス大会を取材してきても、現在世界の4位を狙えるような指導力を持つコーチは、全員がラグビーを離れても優れた人間であることは明らかだ。日本の実情を理解し、咀嚼した上で強化を進める能力は十分にあるだろうし、日本特有の状況があるのなら受け入れる日本(協会)側がしっかり理解させればいいことだ。

 その一方で、先の3つのポイントの中には、日本のラグビーや社会システム特有の繊細な部分も理解していることが反映されているのも明らかだ。ここはエディーに相当なアドバンテージがあるのは間違いない。穿った見方をすれば、その「日本を知る」という条件提示すら、“最初にエディーありき”という懸念を抱かせるものでもあるのだが。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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