無名の元高校教師から日本代表監督に、そして復帰 賛否渦巻く第2次エディー・ジャパンの可能性を問う
ラグビー日本代表次期ヘッドコーチ(HC)にエディー・ジョーンズの復帰が決まった。多くの“憶測”の中で13日に日本ラグビー協会から就任が発表され、翌14日には都内で本人同席の就任会見が行われた。母国オーストラリア、そしてイングランド代表とチームをワールドカップ(W杯)で2度決勝へ導き、日本代表を率いて南アフリカを撃破した実績は誰もが認める一方で、イングランド代表監督を解任され、母国オーストラリア代表監督をわずか9か月で退任しての復帰には批判と疑問の声もある。賛否ある中での復帰で、再び日本代表を鍛え上げることは出来るのか。1995年からコーチとしての姿を見つめ、取材してきた経験を踏まえて、第2次エディー・ジャパンの可能性を考える。(文=吉田 宏)
ラグビーライター・吉田宏が見た第2次エディー・ジャパン前編
ラグビー日本代表次期ヘッドコーチ(HC)にエディー・ジョーンズの復帰が決まった。多くの“憶測”の中で13日に日本ラグビー協会から就任が発表され、翌14日には都内で本人同席の就任会見が行われた。母国オーストラリア、そしてイングランド代表とチームをワールドカップ(W杯)で2度決勝へ導き、日本代表を率いて南アフリカを撃破した実績は誰もが認める一方で、イングランド代表監督を解任され、母国オーストラリア代表監督をわずか9か月で退任しての復帰には批判と疑問の声もある。賛否ある中での復帰で、再び日本代表を鍛え上げることは出来るのか。1995年からコーチとしての姿を見つめ、取材してきた経験を踏まえて、第2次エディー・ジャパンの可能性を考える。(文=吉田 宏)
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「よろしくお願いします」
海外メディアも参加した就任会見。来年1月には64歳になる次期HCは、母親が生まれた国の言葉での第一声に続いて、復帰の思いと目指すターゲットを語り始めた。
「2015年W杯よりさらに飛躍して強くなっている日本代表を再び指揮できることは光栄で、大変嬉しく思います。日本はリーグワンはもちろん高校などのレベルにおいても進化しています。前回就任時はW杯で勝てていないチームだったが、いまは強いだけではなく、より国民に愛されるチーム、選手たちになっている。私の役目は、こんなチームをより一層力強いものにすることです。いくつかターゲットはあるが、まずは世界のトップ8を目指したい。常にこのレベルを持続していけるようにしたい」
就任は2024年1月からで、母国オーストラリアが舞台の次回W杯が行われる2027年末までの契約。日本代表HCには9年ぶりの復帰になる。
2012年から始まった第1次エディー・ジャパンで、日本代表を、まさに心身共に変革した。朝5時、6時からの練習スタートは当たり前。試合よりも厳しい1日4部、5部練習で選手の肉体を鍛え上げ、企業スポーツという形態が“逃げ場”にもなっていた日本人選手のラグビーに取り組む姿勢にプロの厳しさを求めて、W杯通算1勝のチームを指導した。その収穫は2015年の南アフリカ撃破、そしてプール戦3勝という実を結んだ。
しかし、今回の復帰を誰もがその手腕に諸手を挙げて歓迎したわけではなかった。イングランド代表HC時代は、15年大会でプール戦敗退したチームを19年大会で決勝まで導いたが、その後は低迷期に突入。2022年シーズンを通算5勝1分け6敗の成績で終えると、メディアとの軋轢も高まる中でイングランド協会はエディーの解任を決定。W杯イヤーの今年は、母国オーストラリアの代表HCに招かれたが、フランスではプール戦敗退。就任後の通算成績2勝7敗という成績で、5年契約を破棄しての退任となった。最近のHCとしての成績と、15年当時と現在の日本代表の変化も踏まえて、世界トップ8超えを目指す日本代表の指揮官にエディーが本当に適材なのかと思う関係者も少なくない。
フィールド外でも、オーストラリアのHC退任と日本代表への復帰が取り沙汰される中で、日本との“密約”があったのではと報じられ、14日の就任会見でも海外メディアから「オーストラリアファンへ謝罪の思いはないのか」という厳しい質問も飛んだ。