「50年先の日本ラグビー界にとって重要」 各国協会と提携、専務理事が描く未来への周到な戦略
日本ラグビー協会を牽引する岩渕健輔専務理事のインタビュー後編は、日本代表の参入に強い意欲を見せる世界トップ12か国による新たな国際大会を中心に話を聞いた。11月下旬の時点では未確定ながら、日本の参戦はフィジーとともに最有力視されている。ワールドラグビー理事会などの国際会議に出席し、この大会の決定までをつぶさに知る専務理事に、大会誕生の背景と経緯、そして加入が決まれば日本にどのような恩恵をもたらすのかを聞いた。そこには代表強化と、協会がミッションに掲げる2度目のW杯開催実現への周到な戦略も見えてくる。(取材・文=吉田 宏)
日本ラグビーフットボール協会専務理事・岩渕健輔氏インタビュー後編
日本ラグビー協会を牽引する岩渕健輔専務理事のインタビュー後編は、日本代表の参入に強い意欲を見せる世界トップ12か国による新たな国際大会を中心に話を聞いた。11月下旬の時点では未確定ながら、日本の参戦はフィジーとともに最有力視されている。ワールドラグビー理事会などの国際会議に出席し、この大会の決定までをつぶさに知る専務理事に、大会誕生の背景と経緯、そして加入が決まれば日本にどのような恩恵をもたらすのかを聞いた。そこには代表強化と、協会がミッションに掲げる2度目のW杯開催実現への周到な戦略も見えてくる。(取材・文=吉田 宏)
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フランスを舞台にW杯の熱闘が続く10月24日に、統括団体ワールドラグビーは世界トップの12か国が参加する国際大会を2026年からスタートすると発表した。隔年開催となる新大会の参加国には、南半球の強豪4か国によるラグビー・チャンピオンシップ参加国と、ヨーロッパの6か国対抗に参加する計10チームは確定しているが、残り2か国は日本とフィジーが最右翼と見られている。
日本にとっては、隔年とはいえ定期的に世界トップクラスの強豪との対戦が保証されることは大きな魅力だが、実は10年近くにわたり浮上しては消えてきた構想が、ようやく承認されたというのが実情だ。国際会議の場で、ここまでの経緯を知る岩渕専務理事は、長年の迷走から実現に漕ぎつけた背景をこう説明する。
「実際には今回の会議でも反対したユニオン(協会)もありました。しかし、ラグビーが限られたユニオン、限られたエリア、限られたチームだけのスポーツになってしまうのではないか。ラグビーの将来に多くの当事者が危機感を抱いているのも間違いないと思います。ラグビーが、例えばサッカーや他の競技と違って、どうしても若年層へのアプローチが弱いという危惧もあります。そのような危機感をワールドラグビーは持ってきましたし、多くのユニオンも間違いなく同様に持っていました。なので、大枠としての新大会には皆賛成だったのです。何かをしないといけない、何かを変えないといけない、この大会がその1つになりうるという意見です」
ラグビー界がプロ化を容認したのは1995年のことだった。それまでは厳格なアマチュアリズムを押し通しており、今も自分たちの仲間内だけで物事を進めようという傾向は根強く残っている。
そこに一石を投じたのは、実は日本のW杯招致活動だった。2011年大会の招致に失敗した後に、当時の日本協会会長だった森喜朗氏がワールドラグビーの会議の場で「仲間だけでパスを回している」と訴えたことが、まだ“仲間内”ではなかった日本での開催機運を高めたのだ。