突然の35秒ベスト更新で陸上1万m日本新 塩尻和也の飛躍理由は「指導者が『頼むぞ』と言わない」
2024年パリ五輪代表選考会となる陸上の1万メートル日本選手権が10日、東京・国立競技場で行われた。男子は16年リオ五輪3000メートル障害代表の27歳・塩尻和也(富士通)が、27分09秒80の日本新記録で初優勝。従来の日本記録を3人も上回ったハイレベルなレースを制した。自己ベストを35秒も更新。所属先の監督は“塩尻の育て方”を明かした一方、本人も複数種目の経験値にプライドを滲ませた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
陸上1万m日本選手権
2024年パリ五輪代表選考会となる陸上の1万メートル日本選手権が10日、東京・国立競技場で行われた。男子は16年リオ五輪3000メートル障害代表の27歳・塩尻和也(富士通)が、27分09秒80の日本新記録で初優勝。従来の日本記録を3人も上回ったハイレベルなレースを制した。自己ベストを35秒も更新。所属先の監督は“塩尻の育て方”を明かした一方、本人も複数種目の経験値にプライドを滲ませた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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黙っていても結果を出す男、塩尻が大一番で快走した。先頭集団につくと、8000メートルで太田智樹、日本記録保持者・相澤晃、田澤廉との優勝争いに。田澤が脱落し、塩尻は9000メートルで飛び出した。日本新が濃厚な最終盤。拍手を浴び、最後は両手を挙げながら笑顔でフィニッシュ。レースを振り返る口ぶりは冷静だった。
「今日は事前のイメージ通り。8000メートルまで先頭集団について、以降の勝負所で前に出ることを意識した。とてもいい結果で走れたと思います」
21年の自己ベスト27分45秒18を35秒38も上回る大幅更新。2位の太田が27分12秒53、3位の相澤が27分13秒04。相澤の従来の日本記録27分18秒75を3人が上回った。塩尻はここ1か月チームと離れて個別練習。年明けのニューイヤー駅伝へ向けた持久系のトレーニングに加え、スピードを意識して強化された。
所属する富士通の高橋健一監督は、新日本記録保持者とともにレース後の会見に出席。記録更新の要因と“塩尻の育て方”を明かした。
「レース前から調子がいい手応えがあった。春先からずっと好調を維持してきて、とにかく故障させたらもったいないという思い。練習はあまり追い込みすぎないことを意識していた。本人は“ガン”っと追い込む練習をすると潰れてしまう。腹八分目を意識してきた」
塩尻はかつて3000メートル障害で名を馳せた。群馬・伊勢崎清明高時代から主戦場とし、リオ五輪にも出場。18年には日本選手権を制した。だが、近年は5000メートル、1万メートルなどフラットレースが主軸に。今夏のブダペスト世界陸上も5000メートルだった。