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大谷翔平グラブ6万個寄贈の背景にある危機感 「野球しようぜ!」の言葉にスポーツ記者が見た真意

子どもたちへのメッセージに選んだ「野球しようぜ!」の真意

 10月にパリ五輪出場を決めたハンドボール男子日本代表の東江雄斗主将はバスケットやバレーの活躍に触れて「負けられないというプレッシャーはあった」と話した。単純に刺激を受けるだけでなく「これ以上離されたら、ハンドボールの未来はない」という危機感が、36年ぶりのアジア予選突破という快挙につながった。

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 普及のために各競技が競い合い、好結果を出すことは素晴らしい。ただ、それが「パイの奪い合い」で終わるのでは発展性はない。各競技が普及に力を入れ、魅力を発信する。競い合い、協力してスポーツの場を提供する。そんなスポーツ界であってほしい。

 もちろん、少子化の問題はある。ただ、小学生競技人口の減少は、それだけが原因ではない。ネットやスマホの普及などで家遊びが増え、外で体を動かす機会が減った。放課後は習い事などで多忙になり、友だちと遊ぶ時間も限られる。さらに、気軽に遊べる場がなくなるなど、環境面の影響も大きい。

 昭和時代の小学生は学校が終わると近くの空き地や公園に集まって遊んだ。「何して遊ぶ?」。鬼ごっこや缶蹴り、高学年になれば野球もした。場所がせまければ二塁のない三角ベース、人数が足りなければ透明ランナー、バットがなければ手打ち野球、工夫しながら遊びの中で体を動かして楽しんだ。

 今、スポーツをしようと思うと「準備」が必要になる。チームに入会を申し込み、ユニホームを買って、用具をそろえる。親への過度な負担もある。そんな環境が「スポーツ離れ」の一因になっているのは間違いない。

 小学生のスポーツは勝ち負けを争うだけのものではないはず。体を動かすことや汗をかくことを楽しむためのもの。いろいろなスポーツを知り、その中から自分に合ったものを見つければいい。そのためには環境作り。安全に、気軽に遊べる場所、機会が大切だ。

 大谷のプレゼントはグラブ3個。できるのはキャッチボールぐらいかもしれないが、そこに「まずボールに触れてほしい」という大谷の強い思いを感じる。重要なのは気軽に野球に触れる機会。だからこそ「グラブ3個を全小学校に」。スーパースターが小学生たちに同じ目線で呼びかけた「野球しようぜ!」なのだと思う。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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