サッカー新スタジアムは「一部でしかない」 総工費800億円超、ジャパネットが変える長崎の街の風景
スタジアムとアリーナ以外にもオフィスビルやホテルを併設
2024年秋に開業予定となっている、長崎スタジアムシティ。その全体像を確認する最適な場所が、市内を一望できる標高333メートルの稲佐山の展望台である。
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長崎市内を流れて長崎港にそそぐ、浦上川の向こう側に建設中の長崎スタジアムシティが見える。JR長崎駅と浦上駅のちょうど中間地点にあり、徒歩約8~10分ほどでアクセスできる。現在のトラスタが、諫早駅から徒歩25分かかることを思うと、夢のような立地だ。
現在のトラスタは、確かにアクセスには難はあるし、陸上トラック付きではあるものの、今すぐ新スタジアムが必要な状況ではなかった(J1ライセンスも毎年交付されている)。それでも長崎スタジアムシティが建設されることになったのは、むしろ「地域創生」が主目的であったからだ。
「よく『V・ファーレン長崎の新スタジアム』という言われ方をされていますが、それは一部でしかないんですよ」と語るのは、このプロジェクト全体を統括している、株式会社リージョナルクリエーション長崎の執行役員、折目裕である。続きを聞こう。
「我々が目指しているのは、最初からスタジアムを含む複合型施設による街づくり。だからこそ、スタジアムやアリーナだけでなく、オフィスビルやホテルや駐車場もトータルで作っています。モデルとしているのが、シンガポールにあるタンピネス・スタジアム。もともと行政や商業などのハブ施設の中にスタジアムがあって、試合がない日でも多くの住民が集まって利用できるようになっているんですね」
他にも欧米のスタジアムを視察して「いいところ取り」をしている。LAギャラクシーのスタジアムを参考にして、スタンドからピッチまでの距離は約5メートル。また、トッテナムのスタジアムのようにトンネルラウンジを作り、VIPルームから選手入場が間近に見えるようにするという。
気になるのはキャパシティ。当初は4万人収容も検討されたが、資材費の高騰で総工費も当初の予定を上回っているため(現状では約800~900億円と言われている)、スタンドの傾斜を上げて客席数を2万人に絞った。日本代表を呼ぶことは難しくなるが、折目に落胆の素振りは感じられない。
「もし4万人のスタジアムを作ったとして、A代表の試合なんて年に1試合もできればいいほうですよね? 人口も限られているのに、そんなに大きな箱が必要なのか、という話になりました。それに代表戦というのであれば、アンダー代表や女子の代表もありますし」
それでは、800億とも900億とも言われる総事業費は、どのように回収するのか。これについては「複合型施設ゆえの強みが生かされると思います」と折目は説明する。
「収入のメインとなるのは、オフィスや店舗のテナント料。オフィスについては、30から50社くらいが入ることを想定しています。ホテルはラグジュアリータイプで、平均単価は1室4万円くらい。もちろん、インバウンドも期待しています。それと1100台収容の駐車場も、それなりの収益が見込めるでしょう。これらを合わせて、25年で回収できればと考えています」