引退発表の李忠成が描く日本サッカーへの恩返し “1年限定”で全国行脚「プロの物差しを伝えたい」
引退直後に実現したいサッカー界に貢献するアイデア
「Jリーグでプレーしてきた中で、遠藤保仁、小笠原満男、中村憲剛各選手のようなベテランは、ピッチ内で味方の選手たちにサッカーを教えているんです。実際彼らの声のかけ方一つで、ゲームの流れが一変するのを目の当たりにしてきました。
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結局戦術があっても実践するのは監督ではなく選手。『ここで1点取られたら、終わっちゃうよ』とか『もう少し降りて来いよ』などピッチ内での声かけは、ピッチ外からより響きやすく、それができる選手は重宝されます。今でも声かけのタイミングや言葉の質などは試行錯誤をしながら学んでいるところです」
セカンドキャリアの道筋を決めているわけではないが、すでに治療院の経営には乗り出している。若い選手たちとの共同作業は、次のステップへの準備にも通じている。
「結局サッカーもビジネスも同じだと思うんです。治療院でも、若いスタッフの動かし方などは本当に難しい。ここではそういうマネージメントも学べていると思います」
最初からシンガポールを終着点だと決めていたわけではなかった。昨年から2シーズン連続して2ケタ得点を積み上げ、チームの連覇を牽引。まだやれる感覚はあった。しかし反面、現役相応に身体が動く間に実行したいアイデアも温めていた。
「現役並みに動ける1年間限定で、日本全国を巡り子供たちにプロで成功するための具体的な物差しを伝えていきたいんです。プロのシュートの速さ、ドリブルの巧みさ……、それを見て体感すれば、目標ができてトレーニングの質が向上していくと思うんです」
対象は小学生から大学生くらいまでだと考えているが、主に本格的に取り組み始める中学生前後の選手たちに参加して欲しいと願っている。
「1人でも多くの選手たちに、プロの物差しを知って欲しい。それを知っているのと知らないのでは、夢が叶う確率も全然変わってくる。今までそういうことをやった例は聞いたことがない。だから僕がやりたかった」
敢えて「LEE」の姓を選択してピッチに立ち、同じ在日韓国人に希望や勇気を与えようとしたファースト・ペンギンは、引退後最初のチャレンジもプロフットボーラーとして大切な責務だと感じている。
「だったら優勝して終わるのもいいかな……」