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選手も協会も“負け慣れ”した長い低迷から復活 ハンドボール男子36年ぶり自力五輪切符の足跡

パリ五輪出場権と金メダルを土産に都内で帰国会見したハンドボール男子日本代表【写真:荻島弘一】
パリ五輪出場権と金メダルを土産に都内で帰国会見したハンドボール男子日本代表【写真:荻島弘一】

切り札になった5人の海外組

 切り札になったのは、5人の海外組。特に23歳のCP安平光佑(ヴァルダル)の存在だった。中学時代から「ファンタジスタ」「天才」と呼ばれた司令塔は、現在はハンドボールが盛んな旧ユーゴの北マケドニアでプレー。ポーランドの強豪プウォツクで活躍した昨年には、日本人として初めて欧州CLでプレーし、ベスト8入りへ貢献した。

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 予選開幕2日前にドーハで合流すると、チームは一変した。的確な判断で素早くパスを回し、時には自ら切れ込んでシュートも放つ。右サイドから好シュートを連発した31歳のCP元木博起(ジークスター東京)は「安平が入ると攻撃のテンポが上がる。日本リーグのレベルを超えた司令塔ですね」と絶賛。史上初めて高校生で代表入りした日本の大砲、部井久アダム勇樹(ジークスター東京)も「彼が来て、新しい風が吹いた」と予選のMVPに安平の名前をあげた。

 ポジションを奪われる形になった東江主将も「一人MVPをあげるなら安平。彼がいなかったら、攻撃は厳しかった」と話した。ベンチの時間も長く「(精神的に)難しい面もあったけれど、サポートに徹しました」。ポイントで出場しては安平にはできないベテランらしい安定したプレーで攻撃に効果的なアクセントをつけたが「ベンチで見ていて、日本強いなあって、時々観客になっちゃいました」と笑った。

 安平は同じ海外組、フランスでプレーする22歳の吉田守一(ダンケルク)とともに選手だけのミーティングを提案。攻撃は安平が、守備は吉田が中心となって、対戦相手に合わせた戦術や基本的な約束事などをチェックした。毎回1時間、2人の欧州での経験を選手全員で共有。「試合ごとにチームは1つになった」(東江主将)

 安平と吉田の指示は細かかった。どこにどうボールを動かし、相手守備を崩していくのか。ボールを持つ相手によって守備はどこに動き、GKはどこを守るか。神セーブを連発して勝利を引き寄せたGK中村匠(豊田合成)も「本当に疲れました、ここが」と、自らの頭を指して笑った。

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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