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YouTubeでも「出し惜しみしない」 有料サービス「DAZN」が考えるスポーツに対する使命

幅広いスポーツコンテンツを提供する動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」。インターネットにアクセスする環境があればいつでもどこでも視聴できる手軽さで、2016年8月のサービス開始以来、スポーツファンには欠かせないアイテムとして広まってきた。

登録者数100万人達成が持つ意味と今後について大島さんに聞いた【写真:THE ANSWER編集部】
登録者数100万人達成が持つ意味と今後について大島さんに聞いた【写真:THE ANSWER編集部】

公式YouTubeチャンネル登録者数が100万人突破の快挙

 幅広いスポーツコンテンツを提供する動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」。インターネットにアクセスする環境があればいつでもどこでも視聴できる手軽さで、2016年8月のサービス開始以来、スポーツファンには欠かせないアイテムとして広まってきた。

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 有料サブスクリプションサービスでは、サッカー、野球、F1、テニス、格闘技など豊富な種類のスポーツを年間10,000試合以上、ライブ中継や見逃し配信で楽しめる他、「DAZN公式YouTubeチャンネル」も同時に開設。こちらではハイライト動画、注目の選手にフォーカスしたコンピレーション動画に加え、DAZN有料チャンネルで配信している「やべっちスタジアム」や「内田篤人のFootball Time」といったオリジナル番組の切り出しや未公開映像、また「DAZN NEWS TV」などのYouTubeオリジナルコンテンツを無料で配信している。

 そして、YouTubeチャンネル開設から7年経った今年8月、その登録者数はついに100万人を突破した。日本ではスポーツチームやリーグ、またスポーツメディアなどが運営する公式チャンネルが100万人の登録者を記録するのは異例なこと。この快挙達成までの背景や今後の展望について、DAZNでバイスプレジデント・コンテンツデベロップメント&マネタイゼーションを務める大島久之介さんに聞いた。

 ◇ ◇ ◇

——登録者数が100万人を突破しました。

 100万はすごい数だと思っています。我々の有料サブスクリプションサービスとともに、YouTubeチャンネルも多くのスポーツファンに支持されている結果だと思います。同時に、YouTubeチャンネルのユニークユーザー数は月間1000万人以上となっている。本当に数多くのスポーツファンに触れていただいていることは非常に有難く感じています。

——チャンネル開設から7年を経ての到達となりました。

 2016年夏のローンチからここまで、段階を踏みながら成長してきました。当初は有料サブスクリプションのマーケティングやプロモーションのためのチャネルという位置づけでしたが、ここ2年ほど前からYouTubeチャンネルの立ち位置を見直して、しっかり独立した一つのメディアとして活用しています。

 無料のYouTubeはライト層も含めたスポーツファンに広くリーチでき、コミュニケーションが取れるチャンネルであることは間違いない。であれば、まずは広くYouTubeでコンテンツを楽しんでいただく必要があるのではないかと考え、有料サブスクリプションで展開している試合のハイライトだけではなく、オリジナル番組の一部配信やYouTube独自のコンテンツ制作にも取り組むことになりました。

YouTubeを独立したメディアとして活用することで新たな道が切り拓けたという【写真:THE ANSWER編集部】
YouTubeを独立したメディアとして活用することで新たな道が切り拓けたという【写真:THE ANSWER編集部】

コンテンツ制作で意識する「ニアライブ」と「モーメント」

——新たな取り組みを始めてから変化を感じていますか。

 登録者数が増える速度は明らかに変わりました。これまでとは違うタイプのコンテンツを出すようになったことに加え、できる限り出し惜しみなくいこうとコンテンツの数も増やしました。もちろん、YouTubeで出し過ぎてしまうとユーザーが満足してしまい、有料会員にならないのでは……という議論はありました。でも、色々な検証を重ねながら、有料会員の満足度を下げず、かつ無料会員から有料会員への転換という点でも障壁にならないコンテンツの境界を、ある程度は立証できるようになった。その結果と実績を踏まえながら、YouTubeをはじめとするSNSでもコンテンツを出しています。

——SNSのコンテンツ制作で意識していることはありますか。

 YouTubeに限らず、SNSでコンテンツを出す時に意識しているのが、できるだけリアルタイムで出すことです。例えば、サッカーの試合でゴールが生まれたら、試合中にゴール映像を切り取ってSNSに投稿する。我々は「ニアライブ」と呼んでいますが、リアルタイムで試合中継を見られない方には「すごく助かる」と好評の声をいただいています。SNSの投稿で試合中継があることに気付き、「じゃあ見よう」とDAZNアプリを開いたり、さらにはDAZNに加入しようと思ってもらえると嬉しいですね。

 サービスを開始した2016年当初は、ニアライブで試合映像を切り出してSNSに投稿するスポーツメディアやリーグは、ほとんどなかったのではないかと思います。他に先駆けて取り組みを始めた自負はありますし、エンゲージメントも高い。スポーツファンの皆さんにもポジティブに捉えていただいている結果だと感じています。

 もう1点は、しっかりモーメントを捉えるということ。有料プラットフォームでもSNSでも、ちゃんとその時々で話題になっているモーメントを提供する意識を持っています。最近では、FIBAバスケットボールワールドカップ2023をライブ中継しました。この時は我々のSNSチームが現地へ行き、色々なコンテンツをタイムリーに出す意識を持って取り組みました。

 コロナ前後でYouTubeの世界は大きく変わり、一般の方も数多く自分で作ったコンテンツを投稿するようになりました。我々も刺激を受けながら、改めて世の中のニーズやトレンドに合わせたコンテンツ制作を意識したことが、登録者数の増加に繋がっていったのかと思います。

無料というYouTubeの特性を生かし、広い世代にリーチしていきたいという【写真:THE ANSWER編集部】
無料というYouTubeの特性を生かし、広い世代にリーチしていきたいという【写真:THE ANSWER編集部】

YouTubeやSNSはZ世代にリーチできるツール

——YouTubeオリジナルコンテンツにはどのような工夫がなされていますか。

 ローンチ当初からJリーグの試合などで取り組んでいる「ピッチサイドVLOG」というコンテンツがあります。SNSチームのメンバーがスタジアムに行き、文字通りピッチの真横からスマホやGoProなどを使って撮った、臨場感溢れる映像です。ゴールを決めた選手がサポーターのところへセレブレーションに行く様子を間近から撮ったり、スタンド側からサポーターの喜ぶ様子を撮ったり。フットワーク軽く現場に出向いて、フットワーク軽く撮影・編集できる体制から生まれる映像は、我々ならではだと思っています。

 その他にも、インフルエンサーとのコラボやクライアント企業とのパートナーシップから生まれたコンテンツもあります。今年のプロ野球春季キャンプではトクサンTVと、昨年はサッカーでウンパルンパさんといったインフルエンサーの方ともコラボしたコンテンツを制作しました。今後も新たなタレントやインフルエンサーとのコラボや、パートナー企業とタイアップしたブランデッドコンテンツが予定されています。

——その他、今後予定する展開があれば教えてください。

 最近は長尺の番組系コンテンツをYouTubeにも出すようになりました。今夏スタートのスポーツビジネス番組「Frontier of Sports」、欧州サッカーに焦点を当てた「Football Freaks」は、有料サブスクリプションだけではなくYouTubeでも配信しています。当然ながら有料会員のお客様のサービス低下につながらないことを大前提としつつ、どういう反応があるのかを試行錯誤しているところです。

 あと、無料という特性を生かして、いわゆるZ世代の若者にもDAZNに触れていただく機会をもっと作らないといけないと感じています。有料会員には30代以上の方が多いので、将来的にDAZNを選んでいただくことも視野に入れる意味もありますし、スポーツファンの高齢化が進む中、若い世代にちゃんとスポーツを届ける使命は我々にもあるんじゃないかと感じています。このあたりは、YouTubeだけではなく、InstagramやTikTokといった、その他のソーシャルメディアチャネルも含めて推進し始めているところです。

——最近ではスポーツコンテンツを提供する動画配信サービスが増えましたが、その中でもDAZNが持つ強みとは。

 日本のスポーツファンにとって価値が高く重要な国内外の多様なスポーツコンテンツを、ライブ中継やオリジナル番組などを通してしっかりと満足できるだけの量、それに伴う映像やコンテンツの質で担保していけることは、間違いなく我々の強みだと思います。コンテンツを有料サブスクリプションの中だけに閉じ込めるのではなく、YouTubeをはじめとするSNSといった無料の領域では一部チラ見せのような形になるコンテンツはありますが、しっかりお届けできる体制が整っています。

 また、DAZNとして「No.1スポーツ・デスティネーションになる」というミッションを掲げている。その中でスポーツ中継コンテンツの配信に加え、すでにニュース記事も展開しています。将来的にはEコマース、チケット事業など、DAZNを通じてスポーツファンに様々な形でスポーツを楽しんでいただける、そうしたプラットフォームにグループ全体として生まれ変わりつつあります。スポーツファンにとって、なくてはならないサービスになりたい。そう思って「DAZN2.0」と呼ぶ新たなフェイズに入って動き始めていますが、そこでもYouTubeをはじめとするSNSは大きな役割を果たすもの。さらに多くの皆さんに楽しんでいただけるサービスをお届けできるよう努めていきたいと思います。

DAZN

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(THE ANSWER編集部)