「0-114」から目指す花園 元日本代表主将が石巻工に伝えた言葉「1か月で変われる」
2日間で伝えたかったのは“気づき”
3チームが交代で、短い間隔で何度もゲームを繰り返していく。ゲームの合間では、各チームに反省点、うまく行った点を質問する。「どんな声を出せばいい?」「どういう声が欲しい?」。そう問いかけ、選手に考えさせる。最初は全く声が出ていなかった生徒たちからも、次第に声が出始める。声のボリュームも上がっていく。そうしなければゲームを有利に運べない。相手に勝てないからだ。それこそが菊谷氏の狙いだ。
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「ゲームは基本的に楽しいので、自然と声が出るようになります。勝ちたい。より楽しくやりたい。そうすると自分たちから声が出るんです。主体的、自発的に出る。そういうところへのアプローチです」
約2時間。徹底的にタッチフットを繰り返し、“コミュ力”の改善に努めた。日が完全に沈む頃には、練習を視察したOBが「今まで聞いたことがないくらいの声が聞こえてきた」と目を丸くするほどだった。
2日目のラストに、菊谷氏は生徒たちに再び問いかけた。
「今日やった練習はどういう練習だった?」「昨日はどんな反省だった?」と問いかけ、しっかりとした答えが返ってくると、満足げにうなずいた。
「今日はディフェンス、アタックで声を出すこと。今ある戦術をどうすればより良いものになるか。やってきたラグビーは間違っていない。自信につなげるためにはしっかりと声を出すことが大事。しっかりと、いつ、どのタイミングで、声を出せば良いのか。質の高いコミュニケーションを発揮できるようになれば、おのずといい結果、いいプレーにつながっていくと思います。それに選手たちも気づいたと思う」
2日間で計4時間と短時間ながら、実に濃密な時間。生徒たちにとっても、新たな気づきがあり、新たな自信につながったことだろう。
花園出場まではあと2試合。準決勝は10月18日に仙台三高と、勝てば決勝では仙台育英との対戦が濃厚だ。昨年11月には114点差をつけられ完敗した相手との差を、どこまで詰められるのか、そして勝つことはできるのか――。「残り1か月間でやれることはたくさんあります。そして変わることもできます。相手も同じ高校生ですから」。そう言い残し、奇跡を信じる菊谷氏は石巻を後にした。
(THE ANSWER編集部)