[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

「推し」のうちわが揺れる会場 アイドル化する男子バレー、爆発的人気と強化にある密接な関係

バレーボール男子日本代表が東京で開催されたワールドカップ(W杯)プールBで2位となり、来年のパリ五輪出場権を手にした。圧倒的な人気を背景に決めた、4大会ぶりの予選突破。過去にもあったブームを振り返ると、日本バレーボールの強化が人気と密接な関係にあったことが分かる。(文=荻島 弘一)

パリ五輪出場を決めた男子代表、会場は連日アイドルのライブのような盛り上がりだった【写真:AP/アフロ】
パリ五輪出場を決めた男子代表、会場は連日アイドルのライブのような盛り上がりだった【写真:AP/アフロ】

過去にもあったバレーボールブームからひも解く「アイドル化」の意味

 バレーボール男子日本代表が東京で開催されたワールドカップ(W杯)プールBで2位となり、来年のパリ五輪出場権を手にした。圧倒的な人気を背景に決めた、4大会ぶりの予選突破。過去にもあったブームを振り返ると、日本バレーボールの強化が人気と密接な関係にあったことが分かる。(文=荻島 弘一)

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 ◇ ◇ ◇

「本当にみなさん、大好きです!」。バレーボール男子日本代表の高橋藍、ファンに向けたメッセージは印象的だった。7日、スロベニアにストレート勝ちしてパリ五輪キップを手にした後の言葉だ。「大好き」というフレーズに、ファンとの特別な関係を感じた。

 8チーム中上位2チームがパリ五輪出場権を得るW杯。出場権獲得を目前に、会場は信じられないほどの大声援に包まれた。スタンドでは応援バルーンが打ち鳴らされ、「推し」の選手名が入ったうちわが揺れた。まるでアイドルのライブのような盛り上がりだ。

 歓声を浴びて高橋や石川祐希主将、西田有志らが次々とポイントを奪う。選手は両手を広げ、さらにファンをあおる。「応援するファン」と「される選手」というだけの雰囲気とは異なる。「ともに戦う」というひりひりした緊張感とも少し違ってみえた。誤解を恐れずに言えば「一体となって盛り上げよう」という感じか。これこそが、バレーボール特有のムードなのかもしれない。

 爆発的な人気が、08年北京大会以来の五輪予選突破を後押ししたのは間違いない。入場券は売り出し直後に完売し、会場は連日超満員。テレビ視聴率は好調で、グッズも爆売れしているという。大会序盤でエジプトに敗れながら、奇跡的な巻き返し。応援に乗って、チームは勢いを増していった。

 思い出すのは、80年代後半。バレーボールブームが選手たちをアイドルにした。筆頭が現バレーボール協会会長の川合俊一。写真集やイメージビデオは出すだけ完売。女性ファッション誌の表紙に登場し、有料で練習をすれば整理券を手にした長蛇の列ができた。あえて比較をするなら、その人気は今以上だった。

 バスケットのBリーグはもちろん、Jリーグも誕生する前。野球のWBCもなく、ラグビーも注目されるのは早慶明大くらいだった。多くのファン(特に女性)が殺到したのも、他に選択肢がなかったから。Jリーグが全国に定着し、バスケットやラグビーなど幅広いスポーツで日本中が沸く今とは、状況が違った。

 ただ「人気だけ」ではなかった。80年モスクワ大会予選は敗れたが、ブームに乗って84年ロサンゼルス、88年ソウル、92年バルセロナと3大会連続五輪出場。メダルこそなかったが、サッカーやバスケットボールなど他の競技が五輪から遠ざかっていた時代に、唯一世界と戦い続けていたのがバレーボールだった。

1 2

荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA Jleague
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集