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サッカー日本代表、アジアで異彩放つ「個性」 韓国やイランも圧倒した伝統の力と「名手の系譜」

日本人アタッカーは小柄であることが武器になる

 日本は総じて技術が高く、俊敏性に優れ、コンビネーションを得意とし、機動力を感じさせるチームだった。ハイラインを敷いたディフェンスはやや脆さも感じさせたが、チームとしての結束の強さも感じさせた。セットプレーのサインプレーの豊富さにも、それは滲み出ていた。

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 日本は「柔よく剛を制す」ではないが、(テクニック+スピード)×コンビネーションによって、戦力を高める伝統的スタイルがある。

「個人」が大事なのは分かり切っているが、「組織」を重んじる意識が遺伝子の深いところで絡み合い、そこで必要な技術と俊敏性を生かす。かつて欧州を席巻した香川真司、岡崎慎司、内田篤人、長友佑都、長谷部誠、大迫勇也、乾貴士などは代表格だ。

 弁慶よりも、牛若丸というのか。むしろ、小柄であることが武器になる。久保建英、堂安律、中村敬斗などは最たる例だろう。

 U-17日本代表も系譜は変わっていない。

 例えば中盤に入った矢田龍之介は、ボール技術と先を読む戦術眼に優れ、一瞬で相手の裏を取るボールコントロールからの展開力で、抜群のプレーメイクができた。スポルティング・リスボンの守田英正にも通じる上手さがある。

 10番を背負った佐藤龍之介は、1本のパスに対する閃きが格別。創造性、天才性を感じさせる。体格などは違うが、フランクフルトの鎌田大地と重なる意外性を作り出せる。

 そして大会MVPに輝いた名和田我空は、ゴールに対する機動力が出色だった。オーストラリア戦の先制点で神出鬼没のゴールを決め、韓国戦ではFKを直接放り込み、コンビネーションで崩したプレーを裏抜けしてフィニッシュ。香川、久保の剽悍さを彷彿とさせる。

「日本らしさ」

 その伝統が、横溢していたチームだった。

 興味深いことに、対戦相手にも“らしさ”が感じられた。

 イランの10番FWタヘリは、まさにかつてのアリ・ダエイに代表されるように同国伝統のセンターフォワードタイプだった。強く、高く、速い。体を寄せると、それをはねのけるパワーがあって、ゴールまで一直線。ゴールに向かって身体能力の高さをいかんなく発揮できるし、そのエゴイズムがむしろ脅威になる。今大会は決定力を欠いていたが……。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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