ラグビー日本戦激闘に見たノーサイドの本質 「人種、国境の区別がない」両国ごちゃまぜの客席
ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会では、連日各国のファンがスタジアムに足を運び、熱狂している。9月28日のトゥールーズでは、日本が28-22でサモアとの激戦を制した。両国のファンは会場内外で国際交流。熱烈なサモアファンに話を聞くと、ラグビー愛を語ってくれた。熱く、友好的な雰囲気の会場には、ノーサイドの本質が詰まっている。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
現地でサモアファンを直撃、W杯観戦に情熱を注ぐ理由とは
ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会では、連日各国のファンがスタジアムに足を運び、熱狂している。9月28日のトゥールーズでは、日本が28-22でサモアとの激戦を制した。両国のファンは会場内外で国際交流。熱烈なサモアファンに話を聞くと、ラグビー愛を語ってくれた。熱く、友好的な雰囲気の会場には、ノーサイドの本質が詰まっている。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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平和な空気感が流れていた。
日が沈みかけた午後7時。試合2時間前のスタジアム周辺は、人でごった返していた。言葉は通じなくても、思い思いの扮装をした両国のファンがそこかしこで記念撮影をしたり、エールを送り合ったり。ラグビーW杯ならではの光景。その中でひと際目立つ家族がいた。
青いサモアカラーの花柄シャツと巻きスカートに身を包み、首飾りを着けた男性。「サモアの伝統的な衣装さ。君たちの着物のようなもの。我々を象徴しているんだよ」。ひっきりなしに撮影をせがまれ、ビール片手に快く応じていた。
「この雰囲気は素晴らしいね。一生に一度の機会だから。最高だよ」
熱烈なラグビーファンのジョージ・サベリノさん。47歳のお父さんは家族を連れ、23時間かけて南半球からやってきた。「うちの家族にとっては、応援する唯一のスポーツかもしれない。世界中を回ってチームを応援するのが大好き。実は2019年の日本大会にも行ったんだよ。私たちはラグビーを最も愛しているからね」
心血を注ぐ理由はただ一つ。
「人間の情熱を感じられるからだ」
人口は約22万人、面積は東京の1.3倍。南太平洋に浮かぶ小国はW杯9大会連続9度目の出場で2度のベスト8経験があり、ルーツを持つ選手は各国の代表に名を連ねる。街の男たちは仕事が終われば、毎日夕方から楕円形を追うという。
「本当だよ。地元に根付いたスポーツで、特にやることがなければラグビーボールを掴んでプレーを始めるんだ」とサベリノさん。自身もアマチュア選手として熱中していた。「日本のラグビーが好きだから」と日本戦に合わせ、ピカチュウの帽子を被ってきた息子に目をやりながら、1つの質問に淀みなく答える。
ラグビーを知らない人へ、あなたのラグビー愛をどう伝えますか。
「そんなに難しいことではないよ。実際に見て、ワクワクできるんだ。読んで知ることはどんな場面でも有効に働くわけではない。このエンターテインメントを生で見て、楽しむことだ。将来はもっと多くの人に知ってもらって世界中に広がるといいね。既に世界中でプレーされているけど、より高いレベルに向上できると思うよ」
ルールが多少わからなくても、現場にいれば確かな熱がある。取材のお礼を伝えると、差し出されたのは太い腕。握手の後、再び日本ファンと交流していた。