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天才少女が“姿を消した”2年間 クライミング19歳・森秋彩、「伸び悩んだ」後に取り戻した原点

東京五輪代表選考を巡って起きた混乱

 五輪の代表内定がかかる試合で体調が万全でない中、そこにネガティブにとらわれず、自分のやるべきことに集中しパフォーマンスを発揮できた。その精神状態に持っていくことができた理由をこう語る。

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「メンタルサポートもついてもらっているし、それに自分の実体験から学べたからだと思います」

 その実体験とは?

「中3、高1くらいの時は成績ばかりを気にして伸び悩んでいました。そのあと2年くらい大会から離れる期間がありました」

 高1は2019年にあたる。シニアの国際大会に出るようになり、好成績を残したことで注目が集まっていた。

「周囲の影響が一番大きかったですね。国際大会に出るとなると、応援してくれている人からメッセージをもらったりして嬉しいけれどプレッシャーもあったり、日本チームで行動していると勝ちたい気持ちが強かったり、成績を気にしている選手が多かったです。そういう雰囲気の中にいることで自分も成績志向に偏っちゃったかなと思います」

 注目が高まったのは、東京五輪の代表選考が佳境にある時期であったことも大きかった。森もまた、有力候補の1人と目されていたからだ。

 この時、代表選考を巡り混乱が起きていた。2019年の世界選手権で日本女子最上位の2位だった野口啓代が、同大会上位7名に出場権が与えられるとする国際スポーツクライミング連盟の規定により内定、もう1名は開催国の裁量として選考大会を経て選ぶと日本山岳・スポーツクライミング協会は告知していた。ところがのちに国際連盟は世界選手権5位だった野中生萌も出場権を獲得と発表。日本はCASに提訴するなどしたが決定は覆らず、続くはずだった代表選考は突如、終わりを告げた。世界選手権6位だった森の東京五輪への道も閉ざされた。

「(野口)啓代さんがいて、(野中)生萌さんと(伊藤)ふたばちゃんが抜きん出ていた感覚だったので、3人の中の2人が出るんだろうなと思っていました。だからプレッシャーとか、そういうのはなかったです。ただ、オリンピック予選でフランスまで行ったのにそれが無効になって、何のために行ったのかなと思ったし、ちょっとモヤモヤしたんですけど、自分がもっと世界選手権でいいパフォーマンスをしていれば巻き込まれなかったから、ネガティブな思考に陥るというのは違うかなと思いました」

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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