ラグビー日本代表、W杯直前「1勝5敗」の現実 4年前から1試合平均「10.8得点」減少の要因は?
ライリーを生かす形が描けていない現状
相手の防御を崩すという点では、アタックの軸と期待されるCTB(センター)ディラン・ライリー(埼玉WK)にチャンスボールが回ってこないことも響いている。当然、対戦相手からのエースへのマークは厳しくなる。もし、手の内を見せない戦略であれば本番が楽しみだが、7月からの全6試合を通じて、ライリーが自慢のスピード、突破力を発揮できるようなスペースのある状態でパスを受けるシーンが少なすぎる。
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ライリー以外のアタッカーも含めて、彼らをどう生かすかというシナリオがあまり描けていないことが、攻撃力の低下の一因だろう。対戦相手の実力差はあるのだが、W杯イヤーに行われた開幕前の試合を比べても、19年大会は1試合平均29.0得点(3.8トライ)だったのに対して、今年は平均18.2得点(2トライ)と落ちている。
組織でトライを奪うという日本のスタイルをイメージするには、2019年W杯スコットランド戦の前半25分のプレーを思い出してほしい。
敵陣での連続攻撃から5本のパスを繋いでPR(プロップ)稲垣啓太(埼玉WK)が奪ったものだが、ボール周辺の選手それぞれが、自分がパスを受けるのか、密集に入るべきか、どの立ち位置でサポートするのかという役割を考え、適切なポジショニング、走るコースを考えて仕留めたトライは、個々のパート(楽器)が、それぞれの持ち味を出しながら、他のパートとは違う音色、奏法で演じて作り上げたアンサンブルと称していい連係プレーから生まれた。
だが、今の日本代表は、断片的に“いい音”は奏でられても、ボールを持たない選手までも含めた組織としてのアンサンブルには達していないように感じられる。
イタリア戦19分のFB(フルバック)松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)の自陣22メートルライン内から敵陣へのロングキックも、ボールを追う選手の連動が不十分で、イタリアに十分なプレッシャーをかけられず、カウンター攻撃されている。その後、攻守が入れ替わりながら、最後はイタリアの攻撃に日本の防御が振り回されるような状態から21分のトライに結び付けられている。
繰り返しになるが、単音、1つの“楽器”での勝負なら、イタリアはもちろん、プールDで対戦するイングランド、アルゼンチン、そしてサモアにも勝つのは容易ではない。どこまで各々の楽器が共鳴してアンサンブルを奏でることができるか。これが開幕戦、そして開幕後も含めた日本代表の宿題になるのは間違いない。