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世界陸上で異例会見「50~100年後に我々の国はない」 温暖化で“沈みゆく国”が訴えた死活問題

ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。

世界陸連が異例の会見を開いた【写真:Getty Images】
世界陸連が異例の会見を開いた【写真:Getty Images】

ブダペスト世界陸上連載「陸上界の真珠たち」第9回

 ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。

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 第9回は地球温暖化に「最も脆弱な国たち」の代表者5人。日本のスポーツ界でも酷暑対策が近々の課題の中、世界には数十年後に存在自体が消える可能性がある国々がある。国際的なイベントだからこそ考えたい、地球温暖化がスポーツに与える影響。死活問題に直面する国々の陸上連盟代表たちが現状を切実に訴えていた。(文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

 ◇ ◇ ◇

 21日、大会会場では世界陸連(WA)が異例の会見を開いた。

「科学者いわく、50~100年後には、我々の国はもう存在しない」

 出席したのは、地球温暖化に「最も脆弱な国たち」の代表者5人。ツバル陸連のニオネ・エリウタ事務局長は、世界各国の記者に語りかけるように自国の状況を説明した。南太平洋の小さな島国で、最も高いところでも海抜5メートル程度。海面上昇により“沈みゆく国”と呼ばれている。

 WAも危機感を募らせる開催地の暑さ問題。サステナビリティ(持続可能性)部門を作り、今大会はSDGsを推進している。ペットボトルゴミを削減するため、報道陣にウォーターボトルを配布。新設のメイン会場のトラックには、環境負荷に配慮したイタリア・モンド社製のサーフェスを採用した。

 大会前日には、WAのセバスチャン・コー会長が会見で「持続可能な戦略」の重要性を強調。アスリートの75%が、競技中やトレーニングプログラムにおいてすでに気候変動の影響を受けているという調査結果を発表した。連日気温が30度を超え、現地のボランティアが「今年は特に暑い」と漏らすブダペスト。実際にそれを裏付ける事象が発生した。

 日本からは田中希実(New Balance)らが出場する女子5000メートル予選の開始時間が22日、暑さを鑑みて変更に。当初は現地23日午前11時10分だったが、同日の午後7時00分へと後ろ倒しされた。WAは独自の計測をもとに、労作性熱中症のリスクが増加するほど暑さ指数が高まると予想。「これはアスリートにとって許容できるレベルではない」と決断の理由を説明した。

 コー会長は前述の会見で「選手たちの健康が最優先事項」と口にし、「長距離種目、特にロード競技(マラソン、競歩)のいくつかは、1年の中で選手たちを危険に晒さない時期に開催すべきかもしれない」との見解を示していた。早速、選手の安全を第一とする姿勢を実行に移した形だ。

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