日本で女性に救われたジャマイカ選手 トラブルを経た世界陸上銀メダル「彼女がいなかったら…」
ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。
ブダペスト世界陸上連載「陸上界の真珠たち」第8回
ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。
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第8回は、21日(日本時間22日)の男子110メートル障害で銀メダルだったハンスル・パーチメント(ジャマイカ)。2021年東京五輪では決勝当日にバスを乗り間違え、別会場に向かった末、女性スタッフに助けられて出走した。金メダルを獲得し、大きな話題に。いまだに感謝の念を持つとともに、アクシデントでも力を発揮するメンタリティーを教えてくれた。(取材・文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平、鉾久 真大)
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重圧のかかる場面でも動じない。五輪王者は熾烈な争いで駆け抜けた。13秒07(無風)で銀メダルだったパーチメント。世陸王者には届かなかったが、「嬉しいよ。もちろん金メダルを目指していたけど、銀メダルを獲れたことは嬉しく思う」と胸を張った。
パーチメントといえば、東京五輪決勝当日に選手村からバスを乗り間違え、競泳会場に到着してしまった選手。その場にいた女性スタッフの機転とサポートにより、タクシーでなんとか陸上会場にたどり着いた。しかも、結果は金メダル。翌日に感謝を述べに競泳会場を訪れ、女性に金メダルを手渡し、ジャマイカのジャージを贈った。“奇跡の金メダル”と2人の交流は当時、大きな注目を集めた。
この日の決勝を終え、当時の記憶について「もちろんさ! 忘れないよ」と笑顔。「いつでも思い出すことだね。素晴らしい瞬間だったから大切にしたい。日本で助けてもらったんだ。彼女は僕にとても親切だった。彼女がいなかったら、金メダルを獲ることはできなかった」と、人生を変えた出来事にいまだに感謝している。
そんなアクシデントがあっても優勝。当時、どんなメンタリティーで臨んだのか。
「常にポジティブでいるようにしている。いつも自信を持ち続け、トラックに立った時はいつでもベストを尽くせるようにと思っているんだ。家族が、母国が、僕自身が誇れるようにね。いつも楽しみながら、ベストなパフォーマンスを発揮できるようにと考えているよ」
一つの経験からメンタル術を学んだ。昨年オレゴン大会決勝ではレース4分前の故障で棄権を余儀なくされたが、雪辱の舞台を走破。「日本は素晴らしいよ。またそこに行けたらと願っているよ」。25年は東京大会。今度は金メダルへ一直線で突き進む。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)