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「センスがない」と自覚、角田夏実が究めた異色の柔道 「分かっていても防げない」必殺技の原点

柔道をしている時が「一番自分らしい」

 いつも笑顔が絶えない印象のある角田だが、意外なことを言う。

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「傍からはポジティブに見えるかもしれませんが、身内の人は私がめちゃめちゃネガティブなのを知っています。不安がすごく多くて、試合前もいつも不安だらけで。世界選手権でもけっこうネガティブな発言をしていて、普段を知っている人は驚かないんですけど、担当コーチの平野(幸秀)先生は『大丈夫か、すごいネガティブだぞ』と言っていたらしいです(笑)。

 本当に、試合でこうなったらどうしようみたいなことをすごい考えます。緊張すると手汗、足汗をめちゃめちゃかくので、1試合目の開始早々に滑って何十秒かで負けたらどうしようとか。なので地に足をつけるようにゆっくり入っていくんですけど、不安な部分、マイナスの部分を準備段階で考えて向き合っていけば対策していけるかなと思っています」

 それもまた、頂点に立てた要素であるだろう。

 そして角田は言う。

「東京オリンピックで辞めようと思った時、ぽっかり自分に穴が開くような感覚があって、私はほかに何ができるんだろう、あまりないのかなと思いました。柔道からは自分は離れられないな、自分の人生でこれからもずっと一緒に歩んでいくものなのかなって今は思います。柔道をしている時が一番、自分らしいのかなって思います」

 目標への進み方、到達の仕方にはさまざまなルートがある。角田の競技人生とスタイルはそう語っているようでもある。

 目指す舞台は間近。角田夏実はさらなる成長を志し、目標を見据える。

(後編へ続く)

■角田 夏実(つのだ・なつみ)

 1992年8月6日生まれ。千葉県出身。小学2年から父親の影響で柔道を始めると、八千代高を経て東京学芸大に進学。大学で寝技の技術に磨きをかけると、2013年の学生体重別選手権で自身初の全国優勝を果たす。了徳寺大学(現・SBC湘南美容クリニック)に進み16年のグランドスラム・東京大会で優勝。19年に52キロ級から48キロ級に階級を変更すると快進撃が始まり、21年世界選手権から日本の女子選手として史上3人目となる3連覇を達成。6月29日に2024年パリ五輪代表への内定が発表された。

(松原 孝臣 / Takaomi Matsubara)

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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