高校3年間の部活を「楽しかった」と振り返れるか 知日家ドイツ人が伝えたい勝利より大切なこと
近年のドイツで目につく青田買いの問題
上はプロから下は少年まで、多様な指導経験を持つエンゲルスは言う。
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「プロで優れた監督が、少年の指導でも優れているわけではない。両者は全然資質が違う。子供を相手にするなら、監督と教師、両方の資質が要る。どの選手にもしっかりと向き合って、我慢をして育てていく必要がある。サッカーを指導するのと同時に人間性を育んでいくべきで、結局そのほうが良い選手を輩出する可能性が高まっていくはずなんだ」
最近ドイツでは、青田買いの問題が目につくようになったという。
「ブンデスリーガのアカデミーは、良い選手を見つけるとすぐに声をかける。小学生でも獲得して自分のクラブで練習をさせようとする。声をかけられれば、本人も親も喜んで参加をしてしまうよ。ところが実際に加入してみると、通うのに片道1時間もかかって友だちと遊ぶ時間もなくなり、辛くなって12歳で入団したのに、もう14歳で辞めるようなケースが目立っている。そうなると本人も親を失望させたという痛みを感じて、だんだんサッカーへの意欲を失ってしまいがちだ」
次々にパワハラが発覚する日本の現場には、レバークーゼンのシステムが参考になるかもしれない。
「クラブと監督の間に見識の高い第三者が入っています。クラブは毎日のトレーニングを観ている第三者に意見を聞き、それを参考に監督ともディスカッションをする」
ドイツではハラスメントへの認識も浸透しているが、同時に監督の暴走を抑止する手段も導入されている。
現在エンゲルスは、相生学院高校サッカー部のテクニカル・ダイレクターとして、日本とドイツで半年間ずつ過ごす生活を送っている。チームの勝利より個の育成を重視するプロジェクトを興味深いと感じ、オファーを受諾した。