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ラグビーが「難しくなっている」 1試合で6回のTMO、リーグワン名勝負から考える最適な運用法

映像で正確に判断してもらうほうが「納得感はある」

 リーグワン準決勝でのTMOの多さには、いくつかの要因が考えられる。

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 まずは決勝進出を懸けた重要なゲームのため、レフェリーがより正確で公平なジャッジをしようという意識が強かったことだ。もちろん、決勝進出を懸けた選手たちの必死さが、レギュラーシーズンの試合以上に激しいプレーになり、TMOでのチェックが必要な状況を数多く招いたことも影響しているはずだ。加えて、ワールドラグビーがレフェリーの技術向上を目的に、日本を含む主要国のレフェリングを動画で随時チェックしていることも影響している。国際舞台での活躍を目指すレフェリーであればなおさら、国内リーグのたかだか1試合でも疎かにできない事情がある。

 お断りしておくが、今回のTMOの判定や多さを糾弾するつもりはない。プレーが何度も寸断されることにうんざりするのは確かだが、当事者の立場によっても、その捉え方は大きく変わる。2試合で合計11回も試合が数分間の中断を繰り返すことには、様々な賛否の意見がある。TMOを使った裁定基準もシーズンを重ねるごとに変容していくなかで、多方向の角度からの是非論が、今後のこの裁定システムのより良い運用に繋がるはずだ。

 そのため準決勝が終わってから、立場の違う当事者たちにTMOについての意見を聞いてみたのだが、まず敢えて暴論として、このような問題提起を投げかけた。

『レフェリー、アシスタントレフェリー合計3人が目視できる位置、角度のプレーは、TMOを使わず3人の判断を優先する。つまり目視での判定が結果的に誤認であっても尊重する。角度や、選手が邪魔になり目視できなかったプレーのみTMOを使用する』

 日本のラグビーは、2022年シーズンのリーグワン発足からプロ化へと舵を切った。現状でも社員の身分でラグビーを続ける選手も半数ほどいる一方で、リーグではチームにプロへの布石となる事業化を求めている。プロチームとしての価値観なら、レフェリーの誤認で勝敗が変わるような事態は極力避けたいと考えてもおかしくはない。TMOによる合理的で、より正確なジャッジは歓迎するべきというのが一般的な考え方だろう。プレーオフに進出したあるチームのコーチは、こんな見方をしている。

「まずは安全性という観点では、絶対にTMOをやらないといけない。それに試合中はレフェリーがつけているマイクの音声をチームスタッフも聞けるので、どのような判断でTMOが行われたかも分かるので、あまり混乱はない。ゲームが断片的になってしまったとしても、それほどストレスにはならないし、選手のことを考えるとやはり目視だけではなく、映像で正確に判断してもらうほうが納得感はありますね。選手が、すでにTMOによる中断に慣れていることもあり、そんなにフラストレーションはないと思う。それよりも、レフェリーが見えてないんじゃないのかと憶測してしまう判定もあるので、しっかりと確認してくれることはチームとしても安心できる」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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