「殻を破るのも世界への布石」 14年ぶりV4へ、陸上・田中希実が順位より重視したいもの
メンタルの変化は練習にも「走ることを楽しみながら合宿できた」
4月下旬から米国でレースを2つ転戦。標高2000メートルほどの米フラッグスタッフ、岐阜・御嶽で高地合宿を積んだ。5月21日のセイコーゴールデングランプリ(GGP)は、残り400メートルの60秒切りを意識。わずかに届かなかったが、4分11秒56で優勝した。
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「やっとトータルタイムや順位よりも、自分がレースの中でどういうことにチャレンジしたいかということに集中した走りができた。あそこで60秒を切れなかった部分を突き詰めて、レースの中身をもっとこうしたい、ああしたいと考えるきっかけができた」
結果を軽視するわけではないが、より内容に集中する。メンタルの変化は練習にも生きた。今大会までの御嶽合宿でもタイムに縛られることなく、自身の動きの改善に集中。「走ること自体を楽しみながら合宿ができた」。自分を追い詰めすぎず、でも真剣に。この日の予選4分15秒19は昨年大会の予選と同タイム。日本選手権の予選歴代最高タイムだが、中身に大きな違いがある。
「去年は凄く疲れてしまってイメージはあまり良くないです。今日は久しぶりに予選を使って自分の体を確かめるというか、落ち着いた走りはできたと思います。ただ、これで驕らず、明日の決勝でいかに集中するか」
3位以内に入り、参加標準記録4分03秒50をクリアすれば代表入りする。4連覇なら09年吉川美香(翌年に5連覇)以来14年ぶり2人目。4日の5000メートルにも出場し、両種目での2年連続2冠なら史上初だ。
「最初に自分から行く(先頭で引っ張る)としんどいけど、そこの殻を破るのもまた一つ世界陸上に向けての布石になる。自分の殻をどう破るか。ずっと同じチャレンジをしていても窮屈になると思います。いつもは順位、タイムに縛られて伸び伸びとした走りがあまりできないけど、今回はいい意味で思い切ったレースをしたい。
世界陸上の権利を獲るにはタイム、順位が必要ですが、それよりも中身を重視したい。最初からハイペースで行くか、どこかで仕掛けるか。まだ固まってないけど、どちらでも世界レベルの走りでできるようにしていければ」
常に何か変化を加え、前に進む。決勝は2日午後8時30分に号砲が鳴る。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)