「勝ち続けることが人生じゃない」 ボクサー京口紘人の最終章、伝えたい敗北から這い上がる姿
新妻は手料理でサポート「おいしい、おいしいと言ってくれるので、私も楽しい」
すぐに再起を決断。1.9キロ重い1つ上のフライ級に転向した。1月、インフルエンサーの「あきまっくす」として活動してきた亜希さんと結婚。アスリートフードマイスター3級の資格を持つ妻にサポートしてもらった。炭水化物、たんぱく質などのバランスを考慮されたメニューに舌鼓。玄米食、野菜スープ、緑黄色野菜も豊富に摂り、ボクサー仕様の食事で体を作った。
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「めちゃめちゃ美味いですよ。その日のメシが何か楽しみだった。(メニューを)リクエストしたらアレンジしてくれる」。計量直後のリカバリー食は、たまご入りの鶏雑炊。胃に負担がかからぬよう、カブ、ニンジン、ネギ、鶏肉は丁寧にみじん切りされていた。亜希さんも「『おいしい、おいしい』と言ってくれるので、私も楽しく作っていました」と幸せそうに笑う。
これまでより1.9キロ重い階級。背筋など上半身が大きくなり、減量の過酷さは変わらない。初めての階級のため、減量過程で体重データを細かく記録。パワーを保ちながら、9キロ弱を落とし切った。「結婚して負けられない。勝たないといけないなという気持ちは今まで以上に大きい」
プロになって初めての再起戦。「心の持ち方は意識した。初心に帰ること」。強いとは言えない相手だったが、世界ランカー(フライ級はWBC7位)の京口を倒せばその後のチャンスが広がる。「相手は強い気持ちで挑戦してくる。それを上回るように」。小林尚睦トレーナーにも口酸っぱく言われた。
よもやのアクシデントで仕留めきれなかったが、最低ラインに掲げた勝利を死守。「勝ってリングを降りられてよかった。サポートしてくれた妻に感謝です」。会場に駆け付けた妻に感謝した。
陣営の渡辺均会長は「フライ級で世界を獲りたい気持ちが強い。もう2、3戦してチャンスをつかめたら」とサポートを約束。京口は「(新階級に)まだアジャストしきれていない。とりあえず勝てたことがよかった。少しずつですね」と課題克服に意欲を見せる。
「これが最終章。やり切りたい」
酸いも甘いも経験した29歳。再び輝くまでの過程にも、届けるべきストーリーがある。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)