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儚き10代のサッカーセンス 年齢を重ね不意に消える「上手さ」、逸材の未来を分けるものとは

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。日本でも高校・ユース年代から突出したパフォーマンスを見せる選手は、将来のスター候補として脚光を浴びるが、プロ入り後に消えていく才能も少なくない。その成否を分ける分岐点はどこにあるのか。世界的な名選手を例に、上手さだけでは生き残れないと指摘している。

18歳当時のリオネル・メッシ。バルセロナでトップデビュー後も自らの才能を磨き続けた【写真:Getty Images】
18歳当時のリオネル・メッシ。バルセロナでトップデビュー後も自らの才能を磨き続けた【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:競争の中で磨かれる真の上手さ

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。日本でも高校・ユース年代から突出したパフォーマンスを見せる選手は、将来のスター候補として脚光を浴びるが、プロ入り後に消えていく才能も少なくない。その成否を分ける分岐点はどこにあるのか。世界的な名選手を例に、上手さだけでは生き残れないと指摘している。

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「あれだけ上手かったのに、どうしてプロになれなかったのか?」

 その手の話はごまんとある。ユース年代ではチームのエースだったが、いつの間にか脱落していた。珍しくない話だ。

<上手さ>

 それは、ユース年代では危ういものである。生まれ持った感覚や運動神経や勢いなどの要素で、上手さは表にひょいと出る。それが自信になることによって、華やかにも映る。チームの中では突出した存在になるだろう。

 しかしながら、その輝きは明滅するライトのようなものだ。上手さは、不意に消える。

 結局は、メンタルの力が問われる。周りから期待された時、それに応え続ける耐性があるか、あるいは、そのような重圧を感じず、「サッカーが好き」という思いを貫き、技術向上に専心できるか。また、思い上がらずにトレーニングに打ち込める精神的安定も欠かせない。

 繰り返すが、サッカーセンスは儚いものである。少し道を外れただけで簡単に失われる。真の上手さは、競争の中で切磋琢磨され続けてこそ、ホンモノになるのだ。

 世界最高峰のスペイン、リーガ・エスパニョーラでは、1部のレアル・マドリード、FCバルセロナ、アトレティコ・マドリードの有力クラブなど18チームを筆頭に、すそ野は広い。2部22チーム、3部40チーム、4部108チーム。各チーム、その地域で有力な下部組織を持っている。基本的に各年齢のチームがあるわけで、その中には「上手い」と言われる選手が何人かいる。トップクラブのユースは各ポジションにそうした選手を集めたエリートと言えるだろう。そう考えると、例えば16~18歳の1つの世代で、スペイン国内に千人単位で「上手い」選手がいることになるのだ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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