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「オラァ!何や今の!」 勝っても響いたオヤジの怒号、世界王者・重岡兄弟に根付くKO主義の原点

ボクシングの重岡優大と弟・銀次朗(ともにワタナベ)が16日、東京・代々木第二体育館で行われた世界ミニマム級暫定王座決定戦でそろって勝利を収め、同日同階級では世界初の「兄弟世界王者誕生」の快挙を達成した。日本の兄弟世界王者は亀田3兄弟、井上尚弥&拓真に続く3組目。WBC3位の優大は同級7位ウィルフレッド・メンデス(プエルトリコ)に7回25秒KO勝ち、IBF4位の銀次朗は同級3位レネ・マーク・クアルト(フィリピン)に9回2分55秒KO勝ちした。

兄弟で世界王者になり、リング上で涙ぐむ重岡優大(右)と弟の銀次朗【写真:荒川祐史】
兄弟で世界王者になり、リング上で涙ぐむ重岡優大(右)と弟の銀次朗【写真:荒川祐史】

同日同階級では世界初の「兄弟世界王者誕生」の快挙

 ボクシングの重岡優大と弟・銀次朗(ともにワタナベ)が16日、東京・代々木第二体育館で行われた世界ミニマム級暫定王座決定戦でそろって勝利を収め、同日同階級では世界初の「兄弟世界王者誕生」の快挙を達成した。日本の兄弟世界王者は亀田3兄弟、井上尚弥&拓真に続く3組目。WBC3位の優大は同級7位ウィルフレッド・メンデス(プエルトリコ)に7回25秒KO勝ち、IBF4位の銀次朗は同級3位レネ・マーク・クアルト(フィリピン)に9回2分55秒KO勝ちした。

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 元世界3階級制覇王者・亀田興毅氏がファウンダーとしてプロデュースしたボクシングイベント「3150FIGHT Vol5」。ミニマム級は全17階級で最軽量(47.6キロ以下)ということもあり、派手さがないとされている。それでも、重岡兄弟がKOにこだわる原点には、父から授けられた「勝利より内容」の信条があった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 2人のKO勝ちが4000人の観衆を確かに沸かせた。銀次朗は初回にプロ初ダウンを喫したが、3つのダウンを奪い返す逆転勝ち。全て強烈な左ボディーを入れ、元王者を悶絶させた。優大は5回終盤、クリンチ際でバランスを崩した相手に打ち下ろしの左ストレートでダウンを先取。7回にも左ボディーでダウンを奪い、兄弟世界王者の快挙を成し遂げた。

 2人で上がったリング。ベルトを巻き、兄から熱い想いを口にした。

優大「言い訳させてください。ギンがあんなに熱い試合をして、控室で泣きそうになっていた。ウルウル来ていた。正直僕、弟よりダメな部分、だらしない部分があったけど、こいつが横にいなかったらここに立っていない」

 目を潤ませ、声も震えた。時折、目を瞑って聞いていた弟。胸を張って言葉を紡いだ。

銀次朗「4月16日で熊本地震があった日。兄貴と一緒に世界挑戦するのに『俺が負けたら兄貴はどんな気持ちでリングに上がるんだ』とプレッシャーがあった。今日は兄貴の誕生日でもある。何が何でも勝って繋げないといけない。熊本で世界のベルトだけを夢見て、兄貴と頑張ってきた。2人で世界王者になるために言葉だけじゃない支え合いがあった。昔から夢を叶えるために互いに助け合ってきた。その存在があったおかげで、今日なんとか達成できた」

 ミニマム級ながら、KOには強いこだわりがある。「自分はリアルでいたい。誰よりもボクシングの実力で目立ってみせたい」(銀次朗)。プロボクサーとして大切な意識。礎は父・功生さんの厳しさによって出来上がった。熊本で生まれ育ち、2歳違いの兄弟が最初に出会ったのは空手。試合に勝っても、練習したことが出せなければ父に叱られる日々だった。

「なんで勝ったのに怒られないかんとや」

 不貞腐れながらも従うしかなかった。優大は中学1年、銀次朗は小学4年でボクシングに転向。勝ち名乗りを受け、リングを降りた瞬間に怒鳴られたこともあった。「オラァ! 何や今の!」。他の選手や保護者もいる会場。「恥ずかしいって。オヤジ、ちょっと後にしてくれよ」。兄弟そろって顔を赤らめるのが日常だった。

銀次朗「周りのことを気にせんで怒鳴るんですよ。でも、めちゃめちゃ頑張った時、いい内容だった時は負けても怒られなかった。小さい頃からオヤジに『勝つことより内容が大事』って言われて育ってきたので、それは今も染みついている。重岡兄弟は勝つだけでは満足しない。盛り上がるボクシングをしたい」

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