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「俺って人間は汚くて弱い」 希代のボクサー村田諒太、現役最後に残した哲学的人生観

引退は「スタート」と定義した村田【写真:荒川祐史】
引退は「スタート」と定義した村田【写真:荒川祐史】

天国の恩師へ「健康のまま引退する約束は守れました」

 金メダリストとしてプロ転向。重たすぎる期待を背負い、20億円を超える日本史上最大のボクシングイベントの主役を張るまでになった。ヤンチャだった自分を変えてくれた一人が、南京都高の故・武元前川監督。今、天国の恩師に伝えたいことを問われると、「僕の滑舌は大丈夫ですよね?」と聞き、こう切り返した。

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「大丈夫ですよね。やっぱりダメージを溜めて引退したらダメなんだなと。僕が南京都高校に始めて連れて行ってもらった時、引率してくださった方はダメージが残っていた。それを見た時、武元先生は『村田、あんなふうにダメージを溜めたらダメだよ』と。まあ、武元先生自身もあまり何を言っているかわからなかったけど(笑)。

 だから、その約束は守ろうと思っていた。『プロには行かない』という約束を破ってしまいましたけど、今こうやって健康のまま引退するという約束は最低限守れたと思います。それは伝えたいですね」

 しみじみとした空気も流れる会見場。それを意識したか定かではないが、話題はこの日の家族の状況に。「『今日、引退会見だから』って言ったけど、息子は『今日、俺は英語塾だから』ってバーッと出ていきました」と笑いを誘った。

 今後の活動についてはプロモーター業、指導者は否定。ゴロフキン戦から1年間は1日3~4時間、英語を勉強したり、社会人として今後の「基礎づくり」をしていたという。まだはっきりとした青写真はないが、“使命”は実感していた。

「アスリートのキャリアはどうしても夢が叶ってしまうんですね。5歳、6歳、10代で見た夢が20歳とかそこらで叶ってしまう。そうすると、どうしてもその後のキャリアではそれ以上の熱量が持てない。これは当然のことなんですよ。それだけにその後のキャリアに悩んでしまう。僕もそうでした。

 それ以上の熱いものが持てないから、その先の人生が輝かないことはもの凄く理解できる。そういう意味で僕自身がこれからのキャリアをしっかりとつくって、競技だけが人生ではないというものを示す。これからのボクサーだけではなく、アスリートに対するいいロールモデルになれば、自分自身の存在価値だと思うし、目指すべき未来がそこにあると思います。

 自分が得たものをどうやって皆様に還元できるか。応援していただいた皆様だけではなく、これから先の未来を待っている子どもたちも含めて、日本全体、世界全体、社会にどんなものをつくれるのか。それが僕に課せられた仕事。ボクサーとしては引退ですが、これは引退という名のスタートだと思っていますので、よりよい社会をつくるため、よりよい未来をつくるためにこれからも皆様と何かをご一緒できればと思います」

 まだまだ人生は終わらない。引く手あまたのセカンドキャリア。ボクシングへの恩返しはこれからだ。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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