「俺って人間は汚くて弱い」 希代のボクサー村田諒太、現役最後に残した哲学的人生観
ボクシングの元WBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(37歳、帝拳)が28日、都内の会見で現役引退を正式発表した。五輪金メダルからプロで世界王座に就いた唯一の日本人。昨年4月に敗れたゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)戦が最後の試合になった。感情を堪えながらも涙はなく、笑いの入り混じった引退会見。23年のキャリアを振り返りながら人生哲学も語り、村田らしい1時間となった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
村田諒太が引退会見、ボクシングで知った人生観を告白
ボクシングの元WBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(37歳、帝拳)が28日、都内の会見で現役引退を正式発表した。五輪金メダルからプロで世界王座に就いた唯一の日本人。昨年4月に敗れたゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)戦が最後の試合になった。感情を堪えながらも涙はなく、笑いの入り混じった引退会見。23年のキャリアを振り返りながら人生哲学も語り、村田らしい1時間となった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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“語り部”の一面が存分に溢れ出した。スポンサー関係者も駆け付けた会場。村田は帝拳ジム、スポンサー、放送局、後援会など順番にそれぞれの名前を挙げ、顔を見ながら感謝の言葉を述べていった。「もう家族みたいな付き合いもある」。冒頭の挨拶だけで10分。本当の家族を想う言葉は謙虚だった。
「今年とうとう祖父が亡くなってしまった。昔の写真を見ると、見た目も何もかも僕とそっくりなんですよね。そう思った時に、ボクシングで自分が何かを成し得たのかではなく、祖父や母から脈々と僕に受け継がれてきたDNAだったり、そういったものが全て関与して、金メダリスト、世界王者という役を演じさせてもらったと思っています」
世界的レジェンドのゴロフキンと死闘を繰り広げて引退。対戦を長年待ち望み、たどり着いたリングだった。「もっと欲を出せば今まで以上に稼げたと思うけど、それ以上のものが自分の中で見つけられなかった。欲を求めてしまうようになってしまうんじゃないか、執着みたいものが芽生え出しているという自分に気づいた」。決断に迷いはあったが、これが最大の引退理由だった。
14歳だった中学3年からアマチュアでボクシングを始め、2011年世界選手権で銀メダル、12年ロンドン五輪で日本人48年ぶり2人目の金メダル。13年8月にプロデビューし、17年10月に世界王座に就いた。五輪金メダルからプロで世界王座に就くのは日本人初。しかも世界的に層の厚いミドル級。日本人には難しい場所に手を届かせ、世界最強のゴロフキンに立ち向かった。
もっとああすれば、こうすれば……。考え出すとキリがないくらい「ほとんどの試合が反省の塊」と表現する。しかし、23年のボクサー人生を俯瞰して見ると、「悔いはないです」と心から言い切った。