[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

鉄人・鳥谷敬が『チアスタ!』に挑戦 社会貢献「レッドバードプロジェクト」で募る応援

日本プロ野球歴代2位の1939試合連続出場を誇る元阪神・ロッテの鳥谷敬氏。13シーズン連続で全試合に出場し、2017年には史上50人目の2000本安打を達成するなど、18年に及ぶプロ生活では数々の偉業を達成してきた。

2014年にグラブ100個を届けに行ったフィリピンで見た実際

 日本プロ野球歴代2位の1939試合連続出場を誇る元阪神・ロッテの鳥谷敬氏。13シーズン連続で全試合に出場し、2017年には史上50人目の2000本安打を達成するなど、18年に及ぶプロ生活では数々の偉業を達成してきた。

【注目】アスリートとサポーターの気持ちをつなぐ新コミュニティサービス「CHEER-FULL STADIUM チアスタ!」はこちら

 プロ野球はレギュラーシーズンが143試合という長丁場。その中にあって13シーズン連続全試合出場を果たしたのだから、“鉄人”の異名を持つのも頷ける。コンディショニングに細心の注意を払い、技術面でも貪欲にレベルアップに努めたプロ意識と向上心が為せる業だが、もう一つ、鳥谷氏の背中を押した大きな力があるという。それが「応援の力」だ。

「自分の意志だけで動いて、何も責任がないところで力を発揮するのはなかなか難しい。ましてや野球は143試合ありますから、毎日ベストな気持ちで臨むのは大変。でも、自分だけでは諦めてしまうところも、誰かのためだったら挫けず、やる気が湧いてくる。病院訪問をしたりボランティアに行ったり、その先で出会った方々からの応援を肌で感じることが一番の力になるし、大切でした」

 シーズンオフには病院を慰問。2011年からはキャンプ中に沖縄県立南部医療センター・こども医療センターを訪れることが恒例となった。「子どもたちが元気になって球場に応援に来てくれた時、自分が試合に出ていないわけにはいかない。いつ来てもグラウンドに立っていることが一つのモチベーションになっていました」。見えない力に奮い立たせられながら、通算2243試合もグラウンドに立ち続けた。

 2015年には一般社団法人レッドバードを立ち上げ、応援のバトンを世界へつないだ。前年オフに規格外のため廃棄予定だったグラブ100個を買い取り、フィリピン・マニラ郊外のスラム街スモーキーマウンテンで野球教室を開いた。だが、実際に現地を訪れると、子どもたちはTシャツも靴もなしに巨大なゴミの山で生活していた。

「ゴミの山からお金になりそうなものを探すのは子どもの役目。でも、靴を履かないので、ゴミを踏んで怪我をして感染症で亡くなる子どもが多い。そこで一緒に行ったメンバーと『これは野球どうこうじゃなくて、子どもたちが今、必要としているのは靴かもしれない』という話になり、靴を寄付することにしました」

原点に引き戻してくれるアジア各国での触れ合い

 不要になった靴の提供を日本で呼びかけ、2016年からフィリピンをはじめタイ、ミャンマー、ベトナムなどアジア諸国で寄付をスタート。鳥谷氏は同年12月にフィリピンを再訪し、子どもたちに靴を届けた。初めての靴をようやく履いた途端、笑顔で走り出す子どもたちの姿に「靴を履く経験をプレゼントできたと同時に、僕自身も新鮮な気持ちになりました」。仲間と訪問寄付を続けるうちに文房具の必要性も実感。日本で提供を呼びかけるアイテムに加えた。

 その後もシーズンオフになるとアジア各地を訪問し、靴と文房具の寄付を続けた。現役を含め多忙なスケジュールを調整して続けてきたのは、支援が必要な子どもたちのためだけではなく、自分のためでもあったようだ。

「ミャンマーに行った時、何十人といる中で野球を知っている子どもはゼロ。日本では有名なスポーツだけど世界に出たらそうじゃないと知ったのは、自分にとってかなりのプラスでした。野球で成績を残して地位や名声を得るようになると、日常からどんどんかけ離れて自分の現在地が見えなくなる。アジア各地で現地の人や子どもたちと触れ合うことで、人としての原点に戻してもらっていました。自分が何かをしてあげる感覚だと毎年行くのは無理だけど、自分も何かをもらっているので、ずっと続いているんだと思います」

 シーズンが終わると断食をして体をリセットしていたように、アジア各国を訪問することが心のリセットになっていた。

ギフティングを通じて届いた“想い”を現地に届ける橋渡し役

 これまで靴や文房具の寄付を呼びかけてきた「レッドバードプロジェクト」だが、今年から新たに『CHEER-FULL STADIUM チアスタ!』というアスリート支援プラットフォームを利用し、広く“ギフティング”による応援を募ることになった。

『チアスタ!』は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のオフィシャルパートナーを務めた大日本印刷株式会社(DNP)が設立・運営しているサービスで、サポーターがお気に入りのアスリートやチームに対し、自分だけのデジタル応援幕を作成して贈ると、応援幕の購入金額の一部がアスリートの活動資金として還元される仕組みになっている。

チアスタ!×SDGs特設ページの『レッドバードプロジェクト』詳細はこちら

 鳥谷氏は活動を応援するサポーターが少額から気軽に支援できる形を採り入れることに、大きな可能性を感じているという。

「少し余裕のある時に可能な範囲で支援できる形は、する側・される側、どちらにとっても無理がなくていいですよね。僕はこれまで『誰かが身を削って提供してくれた支援で失敗はできない』と強く責任を感じるタイプでしたが、世の中の変化とともに少しずつ変わってきました。人が日々の中で何か喜びを感じるのは、誰かに貢献したり感謝されたりした時。サッカーの日本人サポーターのゴミ拾いのように、身近にできることが人のためになると知る機会も増えてきた。そんな中、自分で活動したいけどできない人が投げ銭を通じて託してくれた想いを現地に届けるのが自分、活動に賛同してくれたみんなでいいことをしよう、と感じるようになりました」

 応援する人の想いをアジア各国の子どもたちに届け、応援される子どもたちの感謝を日本に伝える。鳥谷氏が「レッドバードプロジェクト」を通じて担っているのは、応援と感謝の橋渡し役とも言えるだろう。

 グラブ100個を持って初めてフィリピンを訪れてから今年で10年目。引退後も精力的に活動を続けるが、自身の経験も踏まえ、ぜひ現役選手に社会貢献のアクションを起こしてほしいと願う。

「引退して感じますが、現役時代だからこそ出せる影響力や価値がある。SNSやメディアを通じた発信はもちろん、地域密着や社会貢献といった活動をしていかないと、スポーツの価値は薄れてしまいます。活動を通じて野球界の外を知ることは、選手としての幅を広げ、引退後の人生にも役立つ。現役だからできないとは思わずに、できる選択肢もあることは知っておいてほしいですね」

 球史に残る名遊撃手が宿す社会貢献の心は大きく、そして熱い。

▼チアスタ!では「鳥谷敬」さんへデジタル応援幕を贈ることで支援ができます
チアスタ!「鳥谷敬」のアスリートページはこちら

(THE ANSWER編集部)