日本マラソン界に現れた第3の男 大迫傑に続く25歳山下一貴は走りも、胃袋も「タフ」【東京マラソン】
東京マラソンは5日、東京都庁~東京駅前行幸通りの42.195キロで行われ、山下一貴(いちたか・三菱重工)が日本歴代3位となる2時間5分51秒で日本人トップの7位に入った。2時間6分13秒の9位だった前男子日本記録保持者・大迫傑(ナイキ)に競り勝つ快走。高校時代から「スピードがない」と弱みを自覚する25歳の元箱根ランナーが、タフな姿を見せた。2024年パリ五輪争いは“第3の男”として存在感を発揮する。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
東京マラソン
東京マラソンは5日、東京都庁~東京駅前行幸通りの42.195キロで行われ、山下一貴(いちたか・三菱重工)が日本歴代3位となる2時間5分51秒で日本人トップの7位に入った。2時間6分13秒の9位だった前男子日本記録保持者・大迫傑(ナイキ)に競り勝つ快走。高校時代から「スピードがない」と弱みを自覚する25歳の元箱根ランナーが、タフな姿を見せた。2024年パリ五輪争いは“第3の男”として存在感を発揮する。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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ニューヒーローが前に出た。ハイペースで迎えた32キロ付近。海外勢の集団を割ったのが山下だ。「順位よりタイムを意識して走りたい」。三菱重工の先輩・井上大仁と牽引。井上が苦しそうに後退すると、テレビ画面の中央に躍り出た。
「海外の強い選手もいたので、前に出たらタイムを狙えると思っていた。結果的にあまり出てくれなくて、後半に海外勢が出て反応できなかった。自分のリズムを守ることを意識して走りました」
一人、また一人と脱落し、35キロ地点は日本記録ペースを上回る1時間43分47秒。37キロ付近で海外勢がペースアップすると、山下、大迫ともに置いていかれた。40キロを過ぎ、大迫が右脇腹を押さえて後退。ラスト1キロで山下が引き離し、日本歴代3位のタイムでフィニッシュした。
現日本記録保持者(2時間4分56秒)の鈴木健吾(富士通)、大迫に次ぐ日本歴代3位の好タイム。自己ベストは1分51秒も縮めた。持ち前の飄々(ひょうひょう)としたスマイルで一日を振り返る。
「日本人1位と2時間5分台を出せたのはいい経験でした」
長崎市出身の25歳。中学でどの部活に入るか迷い、友だちに誘われて陸上を始めた。長崎・瓊浦(けいほ)高では、2年時に1500メートルで4分を切れず。「自分にはスピードがない。駒大では悩んだ」。名門に進学し、2018年から箱根駅伝で3年連続2区を走った。「3回とも出しきれていない。自信になったかどうか……」。自分の中では胸を張れる経歴ではなかった。
当時からマラソン挑戦を見据え、練習は距離を増やすスタイルで走りを磨いていった。箱根を走ったことよりも、タフな体をつくったことに自負がある。
「スピードがあるわけではないので、そこで戦わないと。大学の時にマラソンで戦えるよう距離を踏んだのが収穫。高卒で実業団に行っていたら潰れていたと思う」
まだマラソンは3回目。この日、観戦に駆け付けた駒大の恩師・大八木弘明監督は「よく2時間5分台で走ってくれた」と教え子の成長を称えた。