高校サッカーが生む「怪物FWいる」 北嶋秀朗も実感、選手権の力とカオスな部活の環境
全国高校サッカー選手権で2度頂点に立ち、プロ入り後も公式戦通算367試合84得点をマークしてJ1リーグ優勝も経験。日本代表にも選出された北嶋秀朗(44歳)は、開幕30年を迎えたJリーグの歴史にその名を刻むストライカーの1人だ。サッカーへの情熱を燃やしながら歩んできた道と、指導者としての今を描くインタビュー。今回は日本代表FWに高体連出身者が多いことを引き合いに、理屈では説明できない部活の指導がストライカーに及ぼす影響について持論を展開した。(取材・文=小宮 良之)
北嶋秀朗「指導者10年目の視点」第3回、部活がストライカー育成に及ぼす影響
全国高校サッカー選手権で2度頂点に立ち、プロ入り後も公式戦通算367試合84得点をマークしてJ1リーグ優勝も経験。日本代表にも選出された北嶋秀朗(44歳)は、開幕30年を迎えたJリーグの歴史にその名を刻むストライカーの1人だ。サッカーへの情熱を燃やしながら歩んできた道と、指導者としての今を描くインタビュー。今回は日本代表FWに高体連出身者が多いことを引き合いに、理屈では説明できない部活の指導がストライカーに及ぼす影響について持論を展開した。(取材・文=小宮 良之)
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全国高校サッカー選手権、1994年度大会の決勝。北嶋秀朗は高校1年生だったが、プロ顔負けのシュートを決めている。スルーパスをバックラインの背後に呼び込み、出てきたGKをあざ笑うかのように、鼻先でコースを変えてファーサイドに流し込んだ。
「あれは当時から得意技で、プロに入ってからも同じようなのを結構、決めていますね」
北嶋はそう言って胸を張った。
1年生にして、すでに非凡さを示していた。3年生になった96年度の選手権では、右サイドでスルーパスに抜け出すと、今度は中途半端に前に出たGKを見透かし、ループで頭上を抜いた。一連の流れは、トッププロレベルだった。
しかし97年に鳴り物入りで加入した柏レイソルでは、1年目はリーグ戦6試合0得点で期待外れ。2年目にようやく2得点したが、物足りなかった。正念場の3年目で7ゴールを記録し、シドニー五輪予選アジア最終予選メンバーにも選ばれている。そして4年目で18得点。日本代表にも選出され、ゴールセンスを一気に花開かせた。
稀代の“選手権ストライカー”は、何をきっかけにブレイクスルーできたのか。
「バリバリ点を取っているのは選手権だけ。それ以外、インターハイとか他の大会はさっぱり。だから、『選手権男』というのもズバリその通りで、そこでしか取っていない(笑)」
北嶋は正直にそう明かす。
「選手権、大観衆のなかでプレーする光景は強烈でしたよ。帝京戦なんて相手のファンもたくさんいたから、やばかったですね。今の高体連の選手たちもきっとそうだと思いますけど、あの瞬間があるからこそ頑張れるんじゃないですかね? 選手権の在り方はいろいろ議論されますけど、変にいじるべきじゃないと思います。あれは、あれでいい大会です」