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「才能がない」と悟った北嶋秀朗の決断 超高校級FWに衝撃受けた市立船橋での分岐点

全国高校サッカー選手権で2度頂点に立ち、プロ入り後も公式戦通算367試合84得点をマークしてJ1リーグ優勝も経験。日本代表にも選出された北嶋秀朗(44歳)は、開幕30年を迎えたJリーグの歴史にその名を刻むストライカーの1人だ。サッカーへの情熱を燃やしながら歩んできた道と、指導者としての今を描くインタビュー。第2回では市立船橋高校での輝かしい活躍の裏で、“超高校級FW”と出会ってから己の弱さと向き合い、ストライカーとして成長した日々を振り返った。(取材・文=小宮 良之)

柏レイソル時代の北嶋秀朗氏。J1リーグで230試合59得点の記録を残した【写真:Getty Images】
柏レイソル時代の北嶋秀朗氏。J1リーグで230試合59得点の記録を残した【写真:Getty Images】

北嶋秀朗「指導者10年目の視点」第2回、誰よりも冷静に分析していた自身の実力

 全国高校サッカー選手権で2度頂点に立ち、プロ入り後も公式戦通算367試合84得点をマークしてJ1リーグ優勝も経験。日本代表にも選出された北嶋秀朗(44歳)は、開幕30年を迎えたJリーグの歴史にその名を刻むストライカーの1人だ。サッカーへの情熱を燃やしながら歩んできた道と、指導者としての今を描くインタビュー。第2回では市立船橋高校での輝かしい活躍の裏で、“超高校級FW”と出会ってから己の弱さと向き合い、ストライカーとして成長した日々を振り返った。(取材・文=小宮 良之)

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「自分には才能がない」

 北嶋秀朗は、そこに出発点を置くことができたからこそ、柏レイソル、清水エスパルス、ロアッソ熊本と通算17シーズンもの長い間、Jリーグでストライカーとしてやってこられたのかもしれない。

 市立船橋高校時代、第73回、第75回全国高校サッカー選手権で2度の優勝を経験。第73回大会は、得点王に輝いた森崎嘉之の背中を追うように台頭し、帝京を5-0で粉砕した決勝で1得点を記録した。第75回大会は、桐光学園の中村俊輔との決勝戦で自らも得点して2度目の戴冠。得点王にも輝き、通算16得点は当時最多だ。

 北嶋は満員に近い国立競技場で注目を浴び、スーパースターとして眩しいほどに輝いていた。

「名前だけが先行していましたよ」

 自身がそう振り返った高校時代に、透けて見える分岐点とは――。

 北嶋が現実的にプロサッカー選手を意識するようになったきっかけの一つは、中学2年生の時、千葉県選抜としてブラジル遠征に参加し、その大会の決勝でコリンチャンスと対戦した後だ。

「決勝を戦って2-1で負けたんですけど、コリンチャンスの選手がみんなどっと寄ってきて。『お前がMVPだ!』みたいな感じで、ワイワイしながら言ってくれたんですよ。MVPは優勝したほうから出るから、俺じゃなかったんですけど(笑)。ゴールしたのか、アシストしたのか、そこは覚えていないんですけど、“ブラジル人が認めてくれた”って。ポルトガル語は当時、分からなかったけど、みんなサムアップしてくれて、嬉しかったですね」

 同年、日本初のサッカープロリーグ、Jリーグが開幕していた。

 北嶋は、プロというはっきりしたビジョンをつかむことができたのだろう。砂川誠という1学年上の先輩もいた。追いかけるべき選手が、間近にいたのは幸運だった。

「憧れた人で、追っかけていましたね。千葉県選抜のブラジル遠征の話も砂川さんから聞いて。“面白い! 行ってみたい”って」

 そんな北嶋が、砂川の進学した市立船橋に進んだのも必然だった。当時は今よりも、選択がシンプルだったのだ。

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北嶋 秀朗

サッカー元日本代表 
1978年5月23日生まれ。千葉県習志野市出身。名門・市立船橋高(千葉)で1年時から頭角を現し、高校サッカー選手権を2度制覇。3年時の大会では6ゴールを奪い得点王に輝いた。卒業後は柏レイソルに加入し、プロ4年目の2000年シーズンにはJ1リーグ戦で30試合18ゴールをマーク。日本代表にも招集され、同年のアジアカップに出場した。柏には通算12年半在籍し、11年には悲願のJ1優勝。ロアッソ熊本に所属していた13年限りでスパイクを脱いだ。引退後は指導者の道へ進み、熊本、アルビレックス新潟、大宮アルディージャでコーチを歴任。23年からJFLクリアソン新宿のヘッドコーチに就任した。

小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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