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高校サッカー選手権は日本に不可欠 観衆5万人の決勝に海外衝撃、Jユース凌ぐ成功とは

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は日本サッカーの年末年始の風物詩となっている全国高校サッカー選手権がテーマ。近年はJリーグクラブのユースに好素材が集まる傾向が強いものの、“センシュケン”の人気は依然として高く、高体連のチームを経由してプロで成長し、日本代表まで上りつめるタレントも多い。世界的に見て稀有な育成システムの現状について考察する。

今年度の大会でも神村学園の福田師王(右)ら逸材ストライカーが存在感を見せた【写真:中戸川知世】
今年度の大会でも神村学園の福田師王(右)ら逸材ストライカーが存在感を見せた【写真:中戸川知世】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:日本が誇る唯一無二のユース年代の大会

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は日本サッカーの年末年始の風物詩となっている全国高校サッカー選手権がテーマ。近年はJリーグクラブのユースに好素材が集まる傾向が強いものの、“センシュケン”の人気は依然として高く、高体連のチームを経由してプロで成長し、日本代表まで上りつめるタレントも多い。世界的に見て稀有な育成システムの現状について考察する。

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 今年の全国高校サッカー選手権は、岡山県の岡山学芸館高校の優勝で幕を閉じた。岡山県史上初の優勝だった。倉敷市にあるアカデミー出身者が多く、地元での根を張った指導がもたらした最高の殊勲と言える。

 高体連(正式には全国高等学校体育連盟、高校の競技会に出場するための部活動)出身のプロサッカー選手は20年前と比較した場合、確実に減っている。地域のトップ選手を、地元のクラブチームのユースに引っ張られるのがあるのだろう。ただ二番手、三番手と言われる子供たちであっても、指導者が工夫を凝らすことで、まだまだ重要な“供給源”になっている。

 高体連の現状と未来とは?

「センシュケン」

 それは、世界に日本だけが誇る唯一無二の大会と言える。今年の決勝戦は、5万人以上の観客を集めた。

「こんなことがあるのか!?」

 欧州の指導者たちが、全国高校選手権の試合を見て一様に驚く。数万人の観衆が熱視線を送るなかでユース年代の少年たちがプレーするなど、「あり得ない」ことだからだ。

 欧州では、最高峰のUEFAチャンピオンズリーグの前座的にUEFAユースリーグが開催されているが、将来有望な選手が出場するものの、今シーズンの1試合平均観客動員数は700人に満たず(2023年1月現在)、過去5シーズンでも平均は1000人以下である。また、代表レベルでも欧州選手権(EURO)のユース年代にあたるU-21欧州選手権が開催されているが、プレーレベルは高いものの、こちらも観客は数百人というのがしばしばだ。

 日本スポーツ界の冬の風物詩の一つになっている「センシュケン」は、これらの大会を動員力で軽く凌駕している。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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