人生を変えた就活中の出会い 自転車ロード中根英登を「プロになる」と決意させた言葉
大学時代に打ち込んだスポーツ、やり切りましたか? そんな言葉を就職活動で採用担当者から問いかけられたのがきっかけで、プロとして世界最高峰の舞台まで到達したアスリートがいる。自転車ロードレースの中根英登(32歳)だ。昨年で現役を引退。走り抜いた競技人生を振り返った。(取材・文=松本 行弘)
自転車ロードレース、世界最高峰の舞台に辿り着いた男の人生の分岐点
大学時代に打ち込んだスポーツ、やり切りましたか? そんな言葉を就職活動で採用担当者から問いかけられたのがきっかけで、プロとして世界最高峰の舞台まで到達したアスリートがいる。自転車ロードレースの中根英登(32歳)だ。昨年で現役を引退。走り抜いた競技人生を振り返った。(取材・文=松本 行弘)
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中根は昨年まで、国際自転車競技連合(UCI)の格付けでトップカテゴリーのUCIワールドチーム(2022年は18チーム)の1つ、EFエデュケーション・イージーポストに所属。在籍していた2年間で、世界のトップクラスが集まるUCIワールドチームと契約できた日本人選手は、新城幸也(38歳/バーレーン・ヴィクトリアス)と、中根のチームメートで一昨年に引退した別府史之(39歳)の3人だけ。野球に例えれば、ロード界では数少ない日本人メジャーリーガーだ。
「学生の頃にはまったく想像していなかった。まさか世界のトップチームに、海外で過ごしながらなんて。英語も嫌いだったし。人生は分かんないもんだなあ」
続けて、「“あの方”がいなければ、こうなっていなかったかも」と振り返る。
中京大学時代、若手に本場の欧州で武者修行してもらおうというプログラム「チームユーラシア」に、1、2年生が終わった春休みに続けて選ばれ、3年生の春休みは欧州を拠点にしていた日本の「チームNIPPO」に参加した。それでも卒業後は教員か会社員になるつもりだった。4年生になって就職活動をするなか、秋口に2回目の面接をしたある企業の採用担当者から食事に誘われた。
「『このまま内定は出せそうなんだけど、本当にやめていいの?』って言われた。以前、日本代表だったある競技の選手が、『もうやめる』と言って入社して、2、3年後に競技へ戻るために退社したことがあったそうで、『やれるところまでやってみたほうがいいんじゃないの?』と言われたんです」
そして中根は、プロの道へ進んだ。
気持ちの中で、ずっとロードレースとの距離を測りかねていたのかもしれない。高校まではサッカー部だった。
「もちろんサッカーが好きだったからですが、父親と同じスポーツをやったら、ずっと比べられると思って、嫌だったのかなあ」