引退・熊代聖人、2軍落ちのあの日救われた先輩の言葉 万能戦士が歩んだレオ一筋12年
挫折の1年、救われた栗山巧の言葉「絶対、腐んなよ」
大きな挫折は7年目。プロ入り後、初めて1軍出場ゼロに終わった2017年だ。救われたのは、通算2000安打を突破している偉大な先輩・栗山巧の言葉だった。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
鮮明に覚えている。開幕直前、2軍落ちを告げられたすぐ後だった。
「絶対、腐んなよ。誰が見てるかわからんから、頑張っとけよ」
温かく、胸に響く言葉だった。「引退まで、その言葉に助けられました。常に思ってやってましたね」。1年間、1軍に出られなくても、あの一言があったから改めて自分を客観的に見つめ直せた。
考えたのは、ライオンズで熊代聖人という選手はどんなピースになれるのか。「自チームから、俺ってどう見えてるんだろう」。出た答えは、一層ユーティリティープレーヤーとして徹すること。試合前に行っていた訓示も、そんな決意から生まれたものだ。
「人のことばかり気にしていたらあかん、まずは自分のことをしっかりやらないとって考えたのがその年。めちゃくちゃ悔しい1年でしたけど、おかげでその先の5~6年があったと思う」
絶対的レギュラーにはなれなかったけれど、ライオンズに必要とされ、尽くしてきた。最も思い出に残るのは主役、そしてパパになった2013年9月29日。デーゲームのロッテ戦だ。
「多分、今日生まれる」
朝4時頃、里帰りしている妻から連絡を受けた。「試合、頑張って来るわ」と西武ドームに向かったが、ゲーム直前になっても連絡が来ない。「試合中でもいいので、生まれたら教えてください」と広報に伝えていた。