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なぜ、子どもたちが無料で野球ができるのか お金の壁を破るMLBユースアカデミーの意義

無料のユースアカデミーは将来的に球団の収益につながる

 私はレンジャーズのアカデミー以外に、これまでにナショナルズ、レッズのユースベースボールアカデミーも訪問した。共通していたのは、立派なグラウンドと屋内練習場を兼ね備えているほかに、学習するための教室があることだった。ナショナルズのアカデミーには、健康的な食事作りを学ぶ調理実習室があり、レッズには宿題の面倒を見る大学生チューターがいる。

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 レンジャーズでは家庭にコンピューターやインターネット環境がない子どものために、デスクトップパソコンを揃えてオンライン授業を受けられるように整備していた。ユースアカデミーで野球やソフトボールをする子どものうち、将来のメジャーリーガーやソフトボールの米国代表選手となるのはごくわずかで、ほとんどの子どもはスポーツ選手として生計を立てることはできない。だからこそ、学習支援に力を入れ、自炊できる能力を身に付けられるようにしているのだ。

 すべてを無料で提供するユースアカデミーは素晴らしい慈善事業といえる。しかし、筆者は、当たり前のことのようにも感じる。例えば、レンジャーズの新球場建設に公金が投入されている。だから、地域還元はむしろ当たり前のことではないかと感じるのだ。それに、プロスポーツは多くの人に観戦してもらうことで成り立っているビジネスである。

 無料でユースアカデミーに通う子どもたちがチームのTシャツを1枚買ってくれれば、1度でも球場に足を運んでくれれば、ビジネスの観点からも成功といえるのではないか。そうやって、ファンになってくれる子どもが増えて、将来的に球団の収益につながると、また、地域に還元できるお金が得られ、球団と地域とのお金の循環を作ることができるのではないだろうか。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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