W杯落選の哀情「酒に溺れた夜とかあちゃんの涙」 当事者・久保竜彦が明かす16年前の記憶
もう覚えてない酒におぼれた夜と、忘れられない「かあちゃん」の涙
その夜、酒を飲んだんよ。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
岡田さん(岡田武史監督)から「1日だけ休みやるわ」と。大さん(仲の良かった同僚の奥大介さん)がおったけど、大さんもW杯を狙ってて落ちたから、飲んだら大変なことになるなと。それで、嫁さんと家で飲めるだけ飲もうかと思ったら、広島から先輩が来てくれて、横浜の仲の良い知り合いも来てくれて。
口には出さんけど、気を遣ってくれてたと思う。「やっぱり落ちたか」なんて、ああだこうだ言って。で、しこたま飲んだ。そうしたら次の日、二日酔いがきつくて。休みは1日だけのつもりが「すいません、起きれんかったです」と言ったら、岡田さんが「(休みは)今日までだぞ」って許してくれた。
あれは、やけ酒やったんかな。もう、よう覚えとらんけど。
でも、今も覚えとるんは、かあちゃんのこと。
発表の時に俺のかあちゃんが、高校の先生と一緒にテレビに映されてた。それがニュースに流れて、なんでテレビに出とるんやろと思って見よったら、かあちゃんが泣いてた。しょうもないことして、ずっと迷惑かけたけど、泣いてる顔を見たことなかったから。
ちゃんとしなきゃいけないなと。何かあるごとにあの映像を思い出すよね。なんで(当落線なのに)テレビなんか出たんやろって思ったけど、脳裏に焼き付いてる。だから、人に優しくじゃないけど、もう泣かせるようなことしちゃいかんとは思ったよね。
ジーコ監督には期待されとったと思う。
代表で自分の部屋に何度も呼ばれて、手術しろ、手術しろってうるさくて。自分が手術をやった病院も教えてくれたけど、自力で治したいと思った。でも、それだけ気にしてくれた。サッカーもめっちゃ上手かったし、練習も楽しかった。
小さい頃から憧れの人やった。自分も良くなりたい、上手くなりたいというのもあったから、ジーコは引き出してくれた。シュートも違うやり方を教えてくれたし、ジーコじゃなかったら聞けなかった。あともう1か月、W杯で一緒にやってたら自分にプラスになることあったんやろな。
大会は見た。仲良い選手がいっぱいいたし。初戦のオーストラリア戦であんなこと起きるんやなと思った(1-0の後半39分から3失点で逆転負け)。ああいうところでミス起きるんや、それだけ世界って凄いとこなんやって思った。