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「未来の女子ラグビーのために」 7人制代表・大竹風美子が語る“日の丸を背負う”責任

絶対に負けられないと「一つになって戦えた」

 W杯の1か月前に行われたチャレンジャーシリーズ。世界のトップネイションズ入りに挑む国々が参加する大会は、一見華やかさはないものの、日本代表の未来への投資という観点から見ると、W杯以上に重要な今季のハイライトと位置づけていい大会だった。過去の実績で考えるとポーランド、日本、中国などが有力チームで、実際に蓋を開けると、中国が若干精彩を欠いた一方で、個々に高い能力のあるアスリートと、一発でトライを取り切るフィニッシャーが揃うポーランドが勢いを持っていた。

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 そのチャレンジャーシリーズを戦うなかで、日本代表の選手たちがどんな会話をしていたかを、大竹が紹介してくれた。

「(中村)千春さん(コーチ兼任のベテラン選手)を中心に話してくれたんですけど、『ワールドシリーズに行けなくて国内で合宿が続くのと、世界各国を回るのじゃ全く違う。私たちのためにやるんじゃなくて、未来の女子ラグビーのために戦おう』と。それで、みんなで気持ちを一つに戦えました」

 未来のために――。スポーツの世界では目新しい言い回しではないかもしれない。だが日本のラグビー界の中で、男子や15人制も含めた代表チームの中に、このような未来の選手へのレガシーを築き、世代を超えてグラウンド内外で培ってきたものを継承していこうという考え方は、自然に認識され、受け入れられている。これは、世界でもトップクラスのラグビー指導者やチームでは当たり前のことだ。多くの国際舞台やトップレベルのコーチングを受ける中で、このような価値観がチームで培われ、継承されているのが今の日本代表だ。

 大竹が名前を挙げた中村は、東京五輪後の新体制ではコーチ兼任でプレーする7人制女子のレジェンド選手だ。7人制代表での活躍は12シーズンに及び、桜のジャージーを着ての成功も失望も、何度も味わわされてきたベテランの言葉には重みがある。自分のためだけでも、今のチームのためだけでもなく、自分たちが残すであろう轍の後に続く者のためにも絶対に負けられない――。中村が語ることで、こんな思いがチームに自然に浸透し、選手たちを奮い立たせて、快進撃を後押しした。

 大竹はチームの戦いぶりをこう振り返っている。

「(チャレンジャーシリーズは)本当に怖いものはなかったという雰囲気でした。(決勝で対戦した)ポーランドとの違いって、相手はセブンズシリーズにも出場して強豪チームとも戦っていたチームですけど、私たちは未来の女子ラグビーのために戦っていました。そこの気持ちの差は、はっきり出ていたと思います」

 現在の7人制ラグビー女子日本代表は、スキルやフィジカルだけでなく、高い精神性も身につけつつあるようだ。

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■大竹風美子(おおたけ・ふみこ)

 1999年2月2日生まれ、埼玉県出身。ナイジェリア人の父と、日本人の母の間に生まれ、高校までは陸上の七種競技選手として活躍し、インターハイで6位の成績を残す。高校3年の冬にラグビーに転向すると、恵まれた身体能力を生かして進学した日本体育大学でも頭角を現し、2017年に7人制女子日本代表に初選出された。東京五輪での活躍も期待されたが怪我により出場は叶わず。現在はプロ選手として東京山九フェニックスに所属。W杯には18年、22年と出場した。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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