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引退レース2日前、小平奈緒が不意に涙した理由 地元・長野で最後に見た“夢の景色”

表彰式後には長年にわたって競い合った高木美帆(左)と抱き合った【写真:荒川祐史】
表彰式後には長年にわたって競い合った高木美帆(左)と抱き合った【写真:荒川祐史】

長野五輪の光景を再現「オリンピック以上の大きな宝物になった」

 結城コーチはさらに、小平が北京五輪直前の今年1月に右足首を捻挫していたことについて触れながら、今回のタイムの偉大さについて補足説明をした。結城コーチによると、小平は大学3年の時(07年)とオランダ留学2年目(16年)に右足の捻挫を2回していたため、北京五輪前の捻挫によって大事な靱帯が2本切れてしまったという。

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「そう考えると、去年のこの時期よりパフォーマンスがいいというのは、とんでもないことなんです。右足首は5月頃までには機能的に問題のないところまで回復したのですが、これは本人の努力。周りでどういうケアをしようが、サポートしようが本人なんです。奇跡という言い方はおかしいですけど、今回、ここで何事もなかったかのようなパフォーマンスを見せるという努力も、横で見ていて素晴らしいと思いました」

 結城コーチはしみじみと言った。

 全レース終了後の16時頃から始まった引退セレモニーは、ほとんどの観客が残っている中で行われた。小平は今月上旬の会見で、「私がオリンピックという夢を目指すきっかけになったのが長野オリンピック。会場で実際に見ることはできなかったのですが、多くの人たちが一体となって共鳴している空間を、画面越しでも感じ取ることができました。そんな雰囲気、空気感を作り出すことができれば嬉しい。最後に夢見る景色が見られるかもしれないと思っています」と話し、期待を膨らませてこの日を迎えていた。

 夢はラストレースで実現した。

「本当に夢にまで見たこの会場で滑ることができ、幸せでいっぱいです。テレビ画面で見た時より、人の温もりを感じました。今日のこの空間は、自分の中でオリンピック以上に大きな宝物になりました」

 喜びを噛みしめるようにそう言った。

「ゴールを決めて向かう時のエネルギーは、今まで感じたことがないぐらいの熱量でした。これは今後、何かを始める時のエネルギーとして活用できるのではないかと思っています」

 夢を見るきっかけとなったエムウェーブで最高の夢を実現した、世界一幸せなスケーターが微笑んでいた。

(矢内 由美子 / Yumiko Yanai)

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