引退レース2日前、小平奈緒が不意に涙した理由 地元・長野で最後に見た“夢の景色”
10月22日、長野市のエムウェーブには午前9時頃から1000人を超える人々が詰めかけていた。2018年平昌五輪スピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒(相澤病院)の現役ラストレース、全日本距離別選手権・女子500メートルは12時過ぎにスタート。4度出場した五輪で金メダル1つ、銀メダル2つを獲得してきた名選手の姿をこの目にとどめたいと、小平の出番が迫る頃には満員の6085人の観衆がスタンドを埋めていた。
全日本距離別選手権でラストラン、感情を揺さぶられた相澤病院からのメッセージ
10月22日、長野市のエムウェーブには午前9時頃から1000人を超える人々が詰めかけていた。2018年平昌五輪スピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒(相澤病院)の現役ラストレース、全日本距離別選手権・女子500メートルは12時過ぎにスタート。4度出場した五輪で金メダル1つ、銀メダル2つを獲得してきた名選手の姿をこの目にとどめたいと、小平の出番が迫る頃には満員の6085人の観衆がスタンドを埋めていた。
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エムウェーブ関係者は、「満員になるのは98年長野五輪以来ではないか」と、小平の人気の高さに感嘆していた。小平を18年間指導してきた結城匡啓コーチは「僕は清水(宏保)のコーチとして長野五輪を経験していますが、ここに『WAになって踊ろう』が流れたら、そのまま長野五輪です」と感慨深げだった。朝早くから人々が続々と集まる様子は、“スケート王国”オランダの聖地ティアルフのようでもあった。
小平は“本物のアスリートとしての滑りを多くの子供たちに見てもらいたい”と、レースが近づくにつれて高ぶる感情に蓋をしながら当日を迎えた。
実はレース2日前にエムウェーブ入りした時、手にした大会プログラムのページを何気なくめくり、感情を揺さぶられる出来事があったという。
「プログラムって例年はあまり見ないのですが、その中に相澤病院からのメッセージが書いてあって、それを見つけてしまった瞬間に30分間ぐらい涙ぐんで、固まったんです」
普段は見ないというプログラムをめくったのは、どこかにラストレースへ向かう特別な感情があったのかもしれない。
小平はプログラムに掲載されている、相澤病院からのメッセージに目が釘付けになった。そこには「たくさんの応援をありがとう」「13年間、そのエールの傍にいられたことを私たちはとても嬉しく、誇りに感じています」などと綴られていた。
地元の信州大学を卒業した2009年、リーマンショックの影響で所属先が決まらず途方に暮れかかっていた小平を雇い、スケート部を作ってくれた相澤病院。思いやりあふれるメッセージに胸を衝かれ、目に涙が浮かんだ。
「これではいけない。最後までちゃんと腹をくくって滑り切らないと。そう思って、そこから急いで感情の扉を閉めました」