年俸1億円超えも「珍しくない時代」 日本ラグビーで進む高騰化と“カテゴリA”の問題
将来的なプロ化を目指すなかでマネーゲームが過熱
リーグワンが目指す新しいラグビーの在り方は、現在の企業スポーツという形態の恩恵を受けながらチームには段階的な事業化を求め、その先にプロリーグを目指していくというものだ。今年1月の開幕以降、「プロ化」という文言から一歩引いた発言もリーグ関係者からは多く耳にするが、今すぐに完全プロ化へ強く舵を切ったものではないのが現状だ。
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その一方で、選手給与の高騰が参入チームの運営を圧迫しているのは間違いない。2019年W杯の成功などで、日本でプレーしたい代表級の海外選手、日本を新たなマーケットと認めて、保有選手を売り込みたいエージェントらの思惑も相まって、外国人選手の加入ラッシュが起きている。受け入れるチーム側も、リーグワンという従来以上に競争力を高めるリーグに参戦するにあたり、有力・有名選手の獲得に従来以上に力を注ぎ、マネーゲームが過熱している印象だ。
エージェントも乱立状態と言えるなかで、チーム、選手が本当に信頼できる企業、個人は誰かを模索している。エージェントによっては、同業者がすでに契約している選手を自分の保有選手のように語ってチームに売り込んだり、選手を引き抜いたりなどの話は、取材をするなかでも耳にする。本来は企業と学生の間で話し合いが行われるはずの大学生の就職活動でも、エージェントの存在が見え隠れすることに神経を尖らせるチーム関係者もいる。
このような状況のなかで、チームが個々のエージェントの判断基準となる情報の共有や、契約上のルールを定めることは、リーグ、チーム、そして正当な事業を続けてきたエージェントの誰もが求めているのは間違いない。
すでに紹介したように、リーグワン側でもエージェントに登録制度などの規約を設けることを視野に入れている。ライセンス制という明確な縛りについては消極的だが、新規参入のエージェントに門戸を閉ざすのではなく、なんらかの認可を設けることで、チーム側も、どのようなエージェントが参入して契約交渉を行っているのかという状況を把握して、契約などで問題が起きた時も、チーム、エージェント、リーグが情報を共有してルールを作っていくことが、契約交渉の健全化に繋がるという考え方は、多くの利害関係者が認識しているのは間違いない。
カテゴリAの影響も含めた年俸の高騰化、そしてエージェント乱立の整備の必要性について関係者の意見や視点を紹介してきたが、彼らが危惧するもう1つの問題がある。後編では、外国人選手の年俸高騰化の影響が日本選手にも広がっているという実情と、そこから派生する問題をチーム、エージェントらに聞く。(文中敬称略)
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)