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関西人の気質はアタッカー向き? スペインの育成が示唆する“サッカーと地域”の関係性

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はスペインのバスク地方を例に、地域の風土や伝統がサッカー選手の育成にどんな影響を与えているかについて考察する。

堂安律ら関西出身の才気煥発なアタッカーは、歴代の日本代表でも存在感を示してきた【写真:Getty Images】
堂安律ら関西出身の才気煥発なアタッカーは、歴代の日本代表でも存在感を示してきた【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:バスク地方に根付く有能なGK輩出の伝統

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はスペインのバスク地方を例に、地域の風土や伝統がサッカー選手の育成にどんな影響を与えているかについて考察する。

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<地域がサッカー選手を育てる>

 土地、土壌が持つ力は大きい。1人の指導者の影響など遥かに凌駕している。そこに暮らす人々の気質だけでなく、肉体的素質にも根差したものだ。

 スペイン、バスク自治州の名門アスレティック・ビルバオ、古豪レアル・ソシエダは、伝統的に空中戦や球際での激しいやりとりに興じるところがある。そのため、かつては敢闘精神や体格を重んじ、スカウト基準に入れていた。小柄な選手は、遺伝的に落第になるほどだった。

 バスクはスペインの他の地域よりも断然、身長や骨格が大きい。民族的な特徴からサッカースタイルを選択したと言えるだろう。

「闘争」

 それがバスク人のアイデンティティにある。イベリア半島がローマ帝国やイスラム帝国に侵略を受けた時代も、彼らは独立を守った。時に山岳ゲリラとして戦った彼らは、自ずと戦闘的思考を熟成してきた。その闘争の中身は本来、過激なものではなく(フランコ独裁時代には過激テロが横行した時代もあった)、質実剛健さ、規律、粘り強さのようなもので、誇り高さが基礎だ。

 サッカーでも肉体がぶつかり合うプレースタイルを求め、戦士のような選手が尊ばれるようになったのは必然だった。ファイティングスピリットを全開にしたフィジカルサッカーを極めた。1980年代にはアスレティック・ビルバオ、レアル・ソシエダの2強が、それぞれリーガ・エスパニョーラを連覇したほどだ。

 その気質は、守備的ポジションの選手には好都合だったのだろう。一つの成果として、ゴールキーパー(GK)の宝庫となっている。アスレティック・ビルバオはホセ・アンヘル・イリバル、アンドニ・スビサレータ、レアル・ソシエダはイグナシオ・エイサギーレ、ルイス・アルコナーダなどスペイン代表としてワールドカップのピッチに立った伝説的GKを生み出してきた。歴代スペイン代表GKのキャップ数はバスク人が半数を超えるほどだ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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