伊藤美誠、実は「どん底」だった五輪金メダル後 「パリ五輪優勝」と言えなかった日々【世界卓球】
何気ない一言に葛藤「あれ、パリを次の目標にするって言ったっけ」
20歳で世界一になり、さらに高まる周囲の期待。「次はパリ五輪で優勝してね」。何気ないファンのエールが心を曇らせた。
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「あれ、まだ口に出してないのにな。パリを次の目標にするって言ったっけ」。東京五輪まで「全てを出し切って、シングルス優勝で終わる」とストイックに懸けてきた。だからこそ、五輪に向かう覚悟はどれほど重いものなのか、誰よりも理解している。
「凄く嬉しいことではあるんですよ。応援してくれる方、優勝した姿を見たいと言ってくれる方がいるのは凄く嬉しかったです。でも、少しモヤモヤする部分もありました。その瞬間は自分の中でプラスには捉えられなくて、『ちょっとだけ自分の時間にしてもらっていい?』と思った時があって。
パリオリンピック優勝を目標にするとなったら本当に覚悟がいるし、口で言うのは凄く簡単。どちらかと言うと、目を逸らしていた感じでした。自分の目標は自分で決めたいし、『なんで先に言われているんだろう』みたいな感覚にはなりました。でも、それってどう考えてもマイナスの発言。何かしらプラスに変えられることはあったんじゃないかなって思います」
年が明けても大会はやってくる。今年1月の全日本選手権は単複ともに優勝したが、3月のパリ五輪代表選考会は5位。「次に繋がる大会という感じにならなかった。気持ちで最初から負けている状態」。日々の練習は今までと変わらずしんどい。母・美乃りさん、コーチと相談した。
母からは「気持ちが入っていないから、どっちかにした方がいい。やらないならやらない。やるならやる」と言われた。
「確かに中途半端だなと思いました。結局、目標がないと本当に苦しくて、『何のために頑張っているんだろう』と繰り返すことも毎日あって。苦しいことを乗り越えづらい。やっぱり大きな目標が必要だと思います。
このままやっていても自分にも失礼だし、サポートしてくれている方にも失礼。金メダルの嬉しさよりも、シングルスの悔しさの方が強かった。ここではやめれないなって思いました。覚悟を決めて、『パリオリンピックで優勝する』という言葉を自分の口で言った時にスッキリした。最終的に自分で決めることですが、今思うと、いろんな方が道を開いてくれたのかなと思います」