[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

型に“はまらない”のは悪か 平凡なしつけでは磨かれなかったロナウジーニョの天才性

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は2000年代前半から中盤にかけて世界を席巻した天才ロナウジーニョを例に、「型にはまらない選手」について説く。スポーツの世界でもモラルは重視されるべきものだが、稀有な才能を前にした時、その育成方法は一括りにして語れるものではなくなる。

バルセロナで全盛期を過ごしたロナウジーニョ、天才的なプレーでファンを魅了し続けた【写真:Getty Images】
バルセロナで全盛期を過ごしたロナウジーニョ、天才的なプレーでファンを魅了し続けた【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:自由を謳歌し才能を磨いたロナウジーニョ

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は2000年代前半から中盤にかけて世界を席巻した天才ロナウジーニョを例に、「型にはまらない選手」について説く。スポーツの世界でもモラルは重視されるべきものだが、稀有な才能を前にした時、その育成方法は一括りにして語れるものではなくなる。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 ◇ ◇ ◇

 しつけは大事だが、狭いモラルで選手を育てることは難しい。

 例えば、遊び惚けていて遅刻もする。監督やコーチ、年上の選手にも従わない。悪びれず、それを繰り返す。

 これは、絶対的な悪だろうか?

「当たり前だ!」

 日本では、そうした叱責が大勢を占めるかもしれない。交代で選手が少し不満げなだけで、「教育上悪い」などという理論がまかり通る。正論を振りかざすところがあるのだ。

 わずかな粗を探し、悪と糾弾し、糺せなかったら、チームから追放するのか?

 その選手なりの正義があるかもしれない。

 例えば、時間や規律に縛られないからこそ、自由闊達なプレーを見せられる。指導者や先輩だからといって、従順ではないからこそ、苦しい状況でも屈せず、自分の意志で戦えるのかもしれない。「個人主義」を確立した選手で、戦いの中では仲間に頼りにされることによって、想像以上の力を発揮するのかもしれないのだ。

 ブラジル代表としてワールドカップで優勝、FCバルセロナのエースとして欧州王者になり、バロンドールにも輝いたロナウジーニョは、型にはまらない選手だった。

 ロナウジーニョは決して「真面目」なタイプではない。時間にはルーズだったし、練習態度もどこかふざけた調子に見えるところはあった。「ルールをどうやって破るか」のほうを考えているところがあった。例えばコーチの歩き方を後ろから模写し、ふざけてみんなを笑わせた。現代では、「年上を馬鹿にするハラスメント」と議論の対象になるかもしれない。

1 2 3

小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集