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「生きるために稼ぐって感じです」 早大アメフト部出身でNPBを目指す23歳吉村優の今

徳島入団にあたり、休学する選択肢はなかったという吉村【写真:徳島インディゴソックス提供】
徳島入団にあたり、休学する選択肢はなかったという吉村【写真:徳島インディゴソックス提供】

独立リーグならではの過酷な環境「生きるために稼ぐって感じですね」

 望んでいたレベルの高さは想像以上。春季キャンプでは同僚にボコボコに打ち込まれた。「僕も球は速かったけど、ただ思い切り投げるだけで、ピッチングになってない。球が速いといっても、アベレージは低く、140キロを超えないこともあるくらい」と打ちひしがれた。

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 生活も苦しかった。家賃4万円台の1Kで人生初の一人暮らし。食事は自炊。給与も決して恵まれているものとは言えない。スーパーに行けば、値札とにらめっこ。最近は野菜も高い。朝晩、納豆ご飯で凌いだこともある。ハードな練習も重なり、一時、体重は79キロに落ちた。

「本当に、生きるために稼ぐって感じですね」と笑って言う。

「体を大きくしないといけないので、球団が運営している『宮武さぬきうどん・ゆめタウン徳島店』といううどん屋によく行ってます。週1回、多い時は2、3回。1000円分まで400円で食べられる補助があって、温玉ぶっかけ(大)、かしわ天を2つ頼むと、980円でギリギリ(1000円以内に)収まって400円になるんで(笑)」

 しかし、そんな毎日が楽しかった。早実野球部、早大アメフト部の同級生は東京で一流企業に勤めている者も少なくない。吉村も望めば、そうした道があっただろう。ただ、本人は「今しかできないことだし、僕しかできないこと。良い経験ができている」と意に介さない。

 もう一つ、特徴的なのは現役の大学院生であること。大学は基幹理工学部情報理工学科に在籍した理系。AIの技術で人間の心理にアプローチし、チームビルディングに結びつける研究に取り組んだ。早大大学院2年生の現在もオフを利用し、オンラインで2週に1度の発表もこなす。修士論文の構想も膨らませている。

「大学時代は、相槌を打つチャットボットがブレーンストーミングに与える影響という研究をしていましたが、今はその議論をまとめるチャットボットの研究をしています。アイデアを出すことを助けるし、議論を良い形でまとめもする。ファシリテーター的にチャットボットに参加するロボットを作ろうとしています」

 徳島入団にあたり、休学する選択肢は毛頭なかった。

「僕の中では、野球も勉強も、ずっと2つ一緒にやってきているものなので。野球が上手くなるために勉強をしているし、逆に野球する中で勉強に対する発見もある。両方が両方に良い影響を与えるもの。だから、どちらかを辞めるという考えはなかったです。そうしてしまうと、自分が弱くなってしまう気がするので」

 逆境も。困難も。すべてを強さに変え、吉村は徳島で野球選手として進化している。

 最速150キロの直球にカーブ、チェンジアップ、ツーシームと引き出しを増やし、投球の幅を広げた。7月から先発を任され、その初戦となった10日の愛媛マンダリンパイレーツ戦(いきなスポレク)で6回2失点(自責0)と好投し、初勝利。そこから先発3連勝と頭角を現した。

 理想は、楽天・田中将大、オリックス・山本由伸のように、チームを勝たせるエースらしい投手。だから、抑え方にもこだわる。「走者を出してもゼロに動じず、ゼロに抑えるのが僕の仕事」。併殺が欲しい場面では変化球を低めに集め、2アウトからは三振を狙って締めくくり、チームに流れをもたらすのが信条だ。

 まだ野球に復帰して2年足らず。そんな伸びしろが詰まった23歳を、複数のNPB球団のスカウトが調査している。

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