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プロ予備軍ではないジュニアリーグを創設 NBA、MLBが地域スポーツ・部活に手を貸す理由

MLBも実践、球団アカデミーの育成は「メジャーリーグ級の市民の育成」

 世界最高峰のプロバスケットボールリーグが、エリート選手育成ではなく、草の根レベルで参加者を増やすことに力を入れるのはなぜだろうか。アメリカでは、バスケットボールに限らず、子どもの競技スポーツでは、チームに所属しながら、グループレッスンやプライベートレッスンを受け、より高いレベルのチームと対戦するために遠方まで試合に出かけることが一般的である。うまくなりたい、より強いチームのトライアウトに合格したい、競技優秀者に与えられる奨学金を得て進学したいと子どもたちは希望する。この需要にこたえるように、有償での指導や、営利業者によるトーナメント大会の供給がなされている。お金をかけてでも、我が子をよりよい選手に育てたいという保護者と本人の要望を満たすエリート育成サービスは民間がいくらでも提供している。

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 しかし、このようにお金がかかる現実によって、スポーツ活動参加を見合わせる世帯は少なくない。そこで、NBAは「持てる者」の社会還元事業として、誰もが参加できるリーグを発足させたのだと筆者は解釈している。もちろん、このなかからエリート選手が出てくる可能性はあるし、そうでなくても、多くの子どもにNBAのプログラムを通じてバスケットボールに親しんでもらうことは、将来のファンを育成し、マーケットを維持拡大していくことにもつながる。

 これはMLBでも同様だ。MLBには複数の子ども向けプログラムを提供しており、そのなかにRBIというプログラムがある。これは、十分なサービスを受けられていない、つまり恵まれない子どもに野球とソフトボールの参加機会を与え、多様なバックグラウンドを持つ子どもたちを包摂することを目的としている。RBIプログラムは、どちらかといえば、エリート育成の要素も持ち、これまでにヤンキースで活躍したCC.サバシア、フィリーズで活躍したジミー・ロリンズらを輩出した。このほかにも、ナショナルズやレッズなど、複数の球団がアカデミーを運営している。両球団とも低所得世帯の多い地域に施設を作り、子どもたちがお金をかけずに野球に親しむことができ、さらに、学習支援も提供している。ここではエリートの育成よりも、「メジャーリーグ級の市民を育てる」ことを理念として掲げている。

 プロスポーツの地域還元事業は、100%良いものとは言えないかもしれない。提携する地域の団体にとっては、どこまでプロスポーツ側の要求に従うかというジレンマがある。競技をする子どもたちも、マーケティングの対象であり、プロスポーツブランドの影響を受ける。それでも、高い放送権料や入場料で十分な利益を上げた「持てる者」の義務として、どの子どもにもプレーの機会を提供するという還元事業はメリットがデメリットを上回っているように見える。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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