「誰かに負けたくない」より大切なこと 小平奈緒が思う、スポーツマンシップのカタチ
「ライバル」を好まない異端の哲学「誰かを蹴落として、上に立つことがスポーツの良さとは思わない」
そんな求道者にとって、ライバルは誰なのだろうか。意外な言葉が返ってきた。「私はライバルという考え方があまり好きではないです」。そう前置きした上で「戦うべき相手として考えたら、自分自身なのかなと思います」と答えた。ライバルという考え方を好まない――。アスリートとして異端の考えにも聞こえる。しかし、理由は明快だった。
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「誰かを蹴落として、上に立つことがスポーツの良さとは思わないからです」
そう潔く言って、“らしい言葉”で哲学を明かした。
「自分が負けた時に『この人には負けたくなかった』と思うような選手ではいたくない。『この人になら負けて良かった』と、トップに立った選手を素直に認められるような選手でありたいし、自分がトップに立ったとしても自分と競い合ってきた仲間をリスペクトできる選手でありたいと思っています。
そう考えた方が楽だから。いつもガツガツと『誰かに負けたくない』と考えるより『相手がいるから自分を高められる』と考えた方が自分の時間を無駄にせず、生きていける感じがして。相手のことに気を取られている時間があったら、もっと自分に集中したい、自分のやりたいことに夢中になりたいです」
なぜ、こうした価値観が身に付いたのか。自身で「遠回り」と表現する競技人生。その過程に培ってきた経験の一つ一つが「小平奈緒」を作り上げてくれた。「いつからという分岐点はないけど、私が出会ったいろんな選手を見てきて、過去の選手たちが私自身のロールモデルになっていた。そういう姿を示してくれたことが私の考え方を変えてくれたきっかけにあります」という。
今や、小平自身がアスリートの一つのロールモデルとなっていることは言うまでもない。尊敬を集める立場になって、どんな選手を一流のアスリートと思うのか。
「真摯に戦える人。相手にリスペクトを持って、でも、自分自身に芯を持って戦える選手かなと思います」