[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

たった一人の女子マラソン代表 涙の松田瑞生が背負った直前欠場2人の悔しさ、責任、重圧【世界陸上】

東京五輪は代表落選「悔しさは私が一番わかっている」

 やっとたどり着いた世界の舞台だった。20年1月の大阪国際女子を日本歴代6位(当時)の2時間21分47秒で優勝。残り1枠だった東京五輪代表の最有力に躍り出た。しかし、同3月の名古屋ウィメンズで一山が松田の記録を上回って代表内定。松田はあと一歩で五輪出場の夢が絶たれ、悔し涙を流した。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 だからこそ、一山と新谷の心情を自分事のように感じられる。

「出られなかった選手の悔しさは、私が一番わかっている。全ての選手の気持ちを背負って走りました。私は世界の舞台に出られない悔しさ、出場する責任、一人のプレッシャーを経験した。悔しさは、私が一番持っている」

 5月10日から2か月間、米アルバカーキで高地トレーニング。標高1800メートルで鍛えてきたが、後半にコンディションを崩した。予定にない休みを入れながら最終調整。もともとは距離を増やして仕上げるタイプだけに、山中コーチは「不安は大きかったと思う」と慮った。

 それでも、03年パリ大会2位だった野口みずきの2時間24分14秒を上回る日本人の世陸最速をマーク。コーチも驚いた。

「正直、私は完走してくれたら十分と思っていた時もあった。まさか8位入賞ができるところまで来ていたのは、本当に上出来。彼女は納得していなかったけど、十分楽しませてもらった。レースに対する熱意がこちらにも伝わってきた」

 たった一人の日本代表。その事実がしんどい時に足を動かした。熱意が届いたのは、コーチだけではない。取材対応を終えると、無念の思いから報道陣に頭を下げた。「本当にありがとうございました。すみませんでした」。記者たちからも「謝る必要なんてない」と労いの言葉を多くかけられた。

「調整力、体力、精神力、全て劣っていた。やっぱりマラソンは練習ができてこその種目。次に戻ってきた時は結果を残したい」。悔しさ、責任、プレッシャー。一人で多くを背負って走り切った。この経験は順位以上の価値がある。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

1 2
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集