キャプテン翼ばり“顔面ブロック”の京都GK 痛さの裏に楢﨑正剛が見た「職業GK」の本能
スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表GKとして活躍した楢﨑正剛氏は2022シーズンのJ1リーグ、6月の「月間ベストセーブ」に京都サンガF.C.のGK上福元直人の体を張ったセーブを選出した。どんなシーンに楢﨑氏の目が光ったのか。(取材・文=藤井 雅彦)
【DAZN月間表彰】6月は京都GK上福元直人を選出「コースにしっかり体を入れて結果的に顔面に」
スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との連動企画で、元日本代表GKとして活躍した楢﨑正剛氏は2022シーズンのJ1リーグ、6月の「月間ベストセーブ」に京都サンガF.C.のGK上福元直人の体を張ったセーブを選出した。どんなシーンに楢﨑氏の目が光ったのか。(取材・文=藤井 雅彦)
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元日本代表GK楢﨑正剛氏が6月の月間ベストセーブに選んだのは、キャッチでもパンチングでもなかった。漫画「キャプテン翼」に登場する“石崎くん”の十八番「顔面ブロック」だ。
6月18日に行われた明治安田生命J1リーグ第17節京都サンガF.C.対鹿島アントラーズの一戦から。前半43分、京都は中盤でボールを奪われ、自陣に戻りながらの難しい対応を余儀なくされる。すると相手のラストパスに対してDFが足を滑らせてクリアミス。GK上福元直人はFW上田綺世と1対1の場面を強いられたが、体全体を使ってシュートをブロックした。
最初に楢﨑氏が着目したのは、GKとしてのメンタルと準備の部分だ。
「このシーンはマイボールのスローインから始まりました。ハーフウェーラインの少し手前でしたが、チームとしてはこれから攻撃するために前へ出ようという位置です。それが相手のプレスバックによってボールを奪われ、不意な形で守備をスタートしなければいけなくなりました。そういった場面ではGKに限らず、守備者は慌ててしまいがちです」
実際にDFのクリアミスというアクシデントが起こった。さらにボールの先にはリーグ屈指のストライカーである上田が待っている。絶体絶命のピンチに、上福元はどのように対峙したのか。楢﨑氏が心理状態を読み解いた。
「ディフェンスラインの背後に出されたボールに対して味方DFが処理できないことは、GKなら最悪の事態として常に想定できずとも、プレーを瞬時に修正する必要があります。上田選手の位置も視界に入っていたはずで、距離や位置関係を考えるとシュートが飛んでくる可能性が高い。だから上福元選手はすぐにシュートに対応するポジションを取りました。
両足を付けている体勢はシュートストップの基本ですし、この距離であれば体を大きく見せるようなアプローチも重要。彼自身はゴールライン上で守るよりも前へ出てボールにアプローチするのが得意なGKだと思います。少しの隙があれば距離を詰めてプレッシャーをかけてブロックできる確率を上げるために、できる限りのことをやろうと頭の中を切り替えたのでしょう」
そして件の顔面セーブである。コンマ数秒を争う攻防で、おそらく意図的に行ったプレーではない。「コースにしっかり体を入れて、結果的に顔面に当たった」と楢﨑氏は推測する。とはいえGKは体の部位すべてを駆使してゴールを守るのが仕事で、顔面も例外ではない。
「プレー中は集中していますし、プロレベルのGKであればプレーしている時に怖さを感じる選手はほとんどいないはず。あとで映像を見て振り返った時に『危なかったな。痛そうだな』と思うことはありますが(苦笑)。でもGKならば体の痛みよりも、ゴールを決められる痛みのほうが嫌です。それくらいの覚悟がないと務まらない職業かもしれません」