自ら雑用に汗を流す日本ボクシング連盟会長 就任から4年、聞いてきた「現場の声」
日本のアマチュアボクシング界が、一つの目標を達成した。日本ボクシング連盟は前会長の山根明氏の体制下で様々な問題が表面化し、国民体育大会(国体)が2024年からの4年間は「隔年開催」に降格。しかし、28年からは「毎年開催」に復帰することが発表された。18年に体制を引き継いだ内田貞信会長は、今月26日の総会で2期目の任期を満了する。新体制移行からもうすぐ4年。国体復帰の“悲願”を叶えるまでにどんな改革があったのか。
アマチュアボクシングの「国体毎年開催復帰」後編、日本連盟の改革とは
日本のアマチュアボクシング界が、一つの目標を達成した。日本ボクシング連盟は前会長の山根明氏の体制下で様々な問題が表面化し、国民体育大会(国体)が2024年からの4年間は「隔年開催」に降格。しかし、28年からは「毎年開催」に復帰することが発表された。18年に体制を引き継いだ内田貞信会長は、今月26日の総会で2期目の任期を満了する。新体制移行からもうすぐ4年。国体復帰の“悲願”を叶えるまでにどんな改革があったのか。
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後編では、自らリング設営などに汗を流す内田会長に注目。風通しのいい組織を作り、選手が“話しかけやすい会長”になるまでを聞いた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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リモート取材のパソコン画面。そこに映る顔は、嬉しそうに笑っていた。
「いろんな話を聞けるんです。『僕はこう思うんです』『会長、もっとこうできませんか?』って。だから、作業現場って楽しいんですよね。ほんと、いろんな声が聞けますよ」
抑揚のある、柔らかい宮崎訛り。内田会長が明かした場面は、試合会場だった。大会のたびに体育館に設置するリング。力作業をする輪の中に、なんと会長自らが参加していた。試合会場で会長を出迎える行列、会長だけが座る豪華な椅子、飴や果物などが列記された「おもてなしリスト」なんて存在しない。異様な圧迫感なんてもってのほか。前体制から大きく変わった。
「たくさんの方々がいます。でも、一緒に作業しないと、その人たちの本音はわからないんです。将来どうなりたいのか、どんなことを求めているのか。直接話すまでなかなかわからなかったです。『あそこのプロのジムにいろんな考えを持ったコーチがいて、そこの選手が強いですよ~』とかもあります。やっぱり作業現場に行くのが一番。一緒にリングを組んだり、椅子を並べたり、一緒にやるのが一番大事じゃないかなと思いますね」
最初は会長の参加にスタッフも、選手も驚いていた。しかし、ある高校生から「あ、あの、関西の大学に行った方がいいですか? 関東がいいですか? 会長どっちがいいと思いますか?」と進路相談。内田会長の着るジャージには、左胸に日の丸がついている。「それ欲しいです! どうやったらもらえるんですか?」。そんな会話が当たり前になった。
2018年夏の騒動後、9月に新体制が発足。会長になってすぐの頃、一人の審判に「夢は何ですか?」と尋ねた。「審判として五輪に出ることです」。試合運営や審判員を管理する「ナショナルテクニカルオフィシャルズ(NTO)」になり、五輪や世界選手権に行きたいという人もいた。
「前体制では、国際審判員にしても、国際コーチにしても、試験を受けられるチャンスが少なかった。受けたい気持ちがあっても、受けさせてもらえなかった人が多かったです」
新体制では希望者に講習と試験を受ける機会を与えた。日本の国際審判は2018年時点が12人だったのに対し、今年は35人に増える見込み。国際コーチは20人から51人になった。これから大舞台で経験を積み、レベルアップしたノウハウを国内に提供してもらう。好循環を生み出そうとしている。
前編では、ガバナンスを含めた日本連盟内の環境整備、選手へのサポート強化、競技普及、メディア戦略などに触れた。前体制では、特定地域の選手を贔屓したとされる審判員の不正判定疑惑も話題に。公平性を重視し、指導者の育成にも力を入れてきた。
全国大会に参加する指導者には講習を義務付け。現在のスポーツ現場は時が経つごとに指導法が見直され、次々とアップデートされている。今、どんな指導法が求められているのか、日頃のやり方は経験則だけに基づいた時代遅れのものではないか。これらを知る機会を与えている。